子どものやけどの応急処置|流水で20分。水ぶくれ・受診の目安を小児科医が解説
この記事の目次
- この記事のポイント
- 結論:まず流水20分。範囲が広ければ保温を優先
- 正しい応急処置の手順
- 1. すぐに流水を当てる
- 2. 服は脱がさず、服の上から
- 3. 20分を目安に冷やす
- 4. 氷・保冷剤・冷却ジェルシートは直接当てない
- 5. 水ぶくれは潰さず、覆って受診
- やってはいけない民間療法
- 化学やけど・電気やけどの対処
- すぐ受診すべきやけどの見分け方
- 119番と#8000の使い分け
- 花火・お祭りで気をつけたいこと
- 受診後のケアと、再受診が必要なサイン
- 低温やけどにも注意
- 予防のチェックリスト
- よくある質問
- やけどは何分冷やせばいいですか?
- 水ぶくれは潰してもいいですか?
- 熱いお湯を服の上からかぶりました。服は脱がせるべきですか?
- 冷却ジェルシートや保冷剤で冷やしてもいいですか?
- どんなときにすぐ受診すべきですか?
- まとめ
- あわせて読みたい
- 参考文献
この記事のポイント
- やけどはすぐ流水で20分。痛みが和らいでも20分までは続けます12
- 熱い液体をかぶったときは服を脱がさず、服の上から。ただし貼りついていない服・おむつは早く外します
- 範囲が広いときは冷やしすぎない。患部は冷やし、体は毛布で保温しながら救急要請します1
- 氷・保冷剤の直当ては逆効果。水ぶくれは潰しません3
- 範囲が広い・意識がぼんやり・呼吸が苦しい・煙を吸った → 119番
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夏は花火やお祭り、バーベキューと、子どもが熱いものに触れる機会が増えます。やけどの対処は、最初の数分で決まると言っていいくらい、冷やし始めの早さがその後を左右します。
この記事では、慌てているときにそのまま実行できる手順と、受診すべきかどうかの見分け方をまとめました。
結論:まず流水20分。範囲が広ければ保温を優先
やることはすぐに水道の水を当てることです。冷やすのが早いほど、熱が皮膚の奥に伝わるのを止められ、傷が深くなるのを抑えられます12。
| 状況 | 最初にすること |
|---|---|
| 熱いものに触れた・花火が当たった | すぐ流水で20分冷やす |
| 熱い液体を服の上からかぶった | 服は脱がさず、そのまま流水 |
| 水ぶくれができた | 潰さず、冷やしてから覆って受診 |
| 範囲が広い・意識がおかしい | 患部の冷却は長引かせず、体を保温して119番 |
ひとつだけ注意があります。やけどを冷やすのは正しいのですが、体まで冷やしてしまうと危険です。国際的な応急処置ガイドラインでは、これを「やけどは冷やし、患者は温める(Cool the burn, warm the patient)」という言い方で強調しています1。とくに赤ちゃんや、範囲の広いやけどでは、冷やしすぎによる低体温が命に関わります。
正しい応急処置の手順
1. すぐに流水を当てる
水道の流水を、勢いを弱めてやけどの部分に当てます。強い水圧を直接当てると痛みが強くなるので、やさしく流すのがコツです。
受傷から時間が経って気づいた場合でも、あきらめる必要はありません。おおむね3時間以内であれば、冷やす意味があるとされています1。
2. 服は脱がさず、服の上から
熱いお湯・スープ・味噌汁などをかぶったときは、皮膚に貼りついた服を無理に脱がせないでください。脱がせる動作で皮膚がむけてしまいます。着せたまま上から水を当てます3。
逆に、貼りついていない衣類や、熱い液体を吸ったおむつは早く外します。中に熱がこもり続けて、やけどが深くなるからです。あわせて、腫れてくる前に指輪・腕時計・ヘアゴム・靴下など締めつけるものを外しておくと、血流が妨げられるのを防げます1。
3. 20分を目安に冷やす
流水で20分が目安です12。痛みが和らぐと止めたくなりますが、そこで終わりにせず20分までは続けます。「痛みが引いたから軽い」とも限りません。深いやけどでは神経まで傷んで、かえって痛みを感じにくくなることがあるためです1。
ただし冷やすのはやけどの部分だけ。全身を冷やさないでください。震えが出てきたら冷却を切り上げ、受診に向かいます。
範囲が広いとき(子どもの手のひら10枚分以上が目安)は、冷却を長引かせないことも大切です。目安として10分程度までにとどめ、患部以外は乾いた毛布やタオルで包んで保温します。震えや手足の冷えが出てきたらすぐ冷却を切り上げ、保温しながら119番通報してください1。
4. 氷・保冷剤・冷却ジェルシートは直接当てない
氷や保冷剤は0℃以下(冷凍庫のものは−10℃以下になることもあります)まで下がるため、やけどの上に凍傷を重ねてしまいます3。冷却ジェルシートは発熱時の不快感をやわらげる目的の製品で、熱傷の応急処置に必要な冷却には向きません1。
外出先で流水が使えないときは、清潔なペットボトルの水をかけるか、水で濡らしたタオルをこまめに替えて当てるほうが安全です。保冷剤しかない場合はタオルで厚めに包み、長く当て続けないでください。いずれも応急的なしのぎなので、水道のある場所を探してください。
5. 水ぶくれは潰さず、覆って受診
水ぶくれの膜は、傷を守る自然のカバーです。潰すと細菌が入りやすくなり、治りも遅くなります3。
冷やし終えてから、清潔なガーゼか食品用ラップをやさしく乗せて覆います。ラップは傷にくっつきにくく応急の保護に向きますが、注意が3つあります。手足には巻きつけない(腫れて締めつけると血流が悪くなります)、顔には使わない、そして冷却を終えてから当てる、です1。
すでに水ぶくれが破れてしまった場合は、めくれた膜を無理に取らず、こすらないように流水で洗ってから覆って受診してください。
やってはいけない民間療法
アロエや味噌を塗って来院する方は今でもいます。悪気はないのですが、傷の深さが見えなくなって困ります。
- アロエ・味噌・しょうゆ・油・歯磨き粉を塗る:細菌が入る原因になり、診察で深さを判断しにくくなります
- 消毒液や軟膏を自己判断で塗る:受診前は、水以外は何もつけないでください
- 水ぶくれを針で潰す:感染のリスクが上がります
- 氷水に長時間つける:冷やしすぎて組織を傷めます
冷やす以外のことは、医療機関に任せてください。
化学やけど・電気やけどの対処
この2つは熱によるやけどと手順が違うので、分けて覚えてください。
化学やけど(洗剤・漂白剤・石灰など)は、粉末が付いている場合はまず乾いた状態で払い落としてから、大量の流水で20分以上洗い流します(アルカリ性のものは30分以上)。中和しようとしないでください。汚染された衣類は外し、原因になったものの容器を持って受診します1。目に入ったときは、目頭側から流水で最低20分洗い流し続けながら、救急受診してください。
電気やけどは、まずブレーカーを落とすか電源を抜きます。通電している子どもに素手で触れないでください。すぐに電源を切れないときは、乾いた木の棒など電気を通さないもので引き離します。そして、皮膚の傷が小さくても必ず受診します。電流は体の内側を通るため、見た目より深部の組織が傷んでいたり、不整脈が起こることがあるからです1。
すぐ受診すべきやけどの見分け方
外来で判断を分けやすいのは、範囲と部位です。深さは初日には確定できないことも多いので、迷ったら受診が安全側と考えてください。
範囲の目安は、指まで含めた子ども自身の手のひら全体で、体表面積のおよそ1%です1。これより広ければ受診してください。ただし手のひら法はあくまで概算で、実際より狭く見積もりがちです。迷うときは広めに見て受診してください。
部位は、顔・首・手・足・関節・陰部のやけどが要注意です。狭くても、あとで動かしにくくなったり見た目に影響が残ることがあります3。
深さのサインとしては、水ぶくれができている、皮膚が白っぽい・黒っぽい、皮がむけている、が挙げられます。ただし深さの最終判断は医師が行うものなので、当てはまれば自己判断せずに受診してください。
年齢では、乳児のやけどは範囲が狭くても受診を。体が小さいぶん全身に占める割合が大きく、脱水や体温低下も起こりやすいためです。
原因が化学薬品・電気の場合も、前述のとおり見た目にかかわらず受診してください。
119番と#8000の使い分け
次のときは、電話相談を挟まず119番です。範囲が広い、意識がぼんやりしている、呼吸が苦しそう、そして煙を吸い込んだ可能性があるとき。
気道のやけどは見逃すと危険です。閉鎖された室内や車内での受傷、鼻毛の焦げ、口や鼻の中のすす、声のかすれ、ゼーゼー、しつこい咳、よだれや飲み込みにくさがサインになります。やっかいなのは、受傷直後は元気に見えても数時間後に急に気道がふさがることがある点です。当てはまるときは様子を見ないでください1。
そこまでではないけれど判断に迷う、という程度であれば、小児救急電話相談「#8000」も使えます4。受付時間は自治体によって異なります。
花火・お祭りで気をつけたいこと
夏のイベントには、家の中とは違うやけどの原因があります5。
- 手持ち花火:火のついた部分は非常に高温です。腕を伸ばして体から離し、人に向けない、のぞき込まない。子どもだけで持たせず大人がそばにつきます
- 線香花火の玉:先端の玉が落ちて足の甲やサンダルの隙間に当たります。花火の日はサンダルより足を覆う靴が安全です
- 消火用のバケツ:終わった花火もしばらく熱を持っています。水を張ったバケツを必ず用意します
- 浴衣・化繊の服:袖が広い浴衣は火に近づきやすく、化学繊維は溶けて皮膚に貼りつきます。袖はまとめておくと安心です
- 屋台の食べ物・鉄板:たこ焼きや揚げ物は外側が冷めていても中が非常に熱いことがあります。渡す前に大人が確認を
もし花火でやけどをしたら、慌てず前述の手順どおりに動いてください。まず流水で20分、これだけは変わりません。
夏の外遊びでは、熱中症の予防もあわせて確認しておくと安心です。
受診後のケアと、再受診が必要なサイン
医療機関では、深さと範囲に応じた処置と、必要に応じて外用薬が処方されます。家庭では、処方どおりに薬を使い、自己判断で市販薬を重ねないこと、指示された頻度でガーゼを交換すること、治りかけのかゆみで掻かせないことがポイントです。
次のようなときは、予定を待たずに再受診してください。赤みが広がってきた、膿が出る・においがする、痛みが強くなってきた、熱が出た。感染を起こしているサインです。
浅いやけどなら1〜2週間ほどで治ることが多いのですが、「いつまで通うのか」は深さで変わります。初回の受診時に、次にいつ見せればいいかを聞いておいてください。治ったあとの皮膚はしばらく日焼けで色素沈着を起こしやすいので、日焼け対策を丁寧に続けると跡が目立ちにくくなります。
低温やけどにも注意
見落とされがちなのが低温やけどです。湯たんぽ、カイロ、ホットカーペット、電気毛布など、触れていられる程度の温度でも、同じ場所に長時間当たっていると皮膚の奥まで傷みます。見た目が軽そうでも深いことがあるため、範囲が小さくても受診してください。
予防のチェックリスト
家庭内のやけどは、置き場所の工夫でかなり防げます5。
- 熱い飲み物をテーブルの端に置かない。引っ張られるのでテーブルクロスは使わない
- 炊飯器やケトルの蒸気口に手が届かない場所に置く。加湿器の蒸気も同じです
- お風呂は先に水、あとからお湯。子どもを入れる前に必ず湯温を確認する。これは順番を守るだけで防げるので、家族全員で共有しておいてください
- 花火の前にバケツと水、靴、まとめた袖を準備する
よくある質問
やけどは何分冷やせばいいですか?
流水で20分が目安です。痛みが和らいでも20分までは続けます。ただし冷やすのはやけどの部分だけにして、震えが出たら切り上げてください。範囲が広いときは冷却を長引かせず、体を保温しながら119番です。
水ぶくれは潰してもいいですか?
潰さないでください。膜が傷を守っています。破れてしまった場合は、めくれた膜を無理に取らず、流水で洗って覆ってから受診してください。
熱いお湯を服の上からかぶりました。服は脱がせるべきですか?
貼りついている服は脱がさず、上から流水を当てます。一方で、貼りついていない服や熱い液体を吸ったおむつは早く外してください。腫れる前に指輪やヘアゴムも外しておきます。
冷却ジェルシートや保冷剤で冷やしてもいいですか?
直接当てるのは避けてください。冷却ジェルシートに熱傷を冷やす力はほとんどなく、保冷剤や氷は凍傷の原因になります。
どんなときにすぐ受診すべきですか?
手のひら(指を含む)より広い、水ぶくれがある、白っぽい・黒っぽい、顔や首・手・足・関節・陰部、化学薬品や電気、乳児のやけどは受診を。範囲が広い・意識がぼんやり・呼吸が苦しい・煙を吸ったときは119番です。
まとめ
子どものやけどで最初にすることは、迷わず流水を当てることです。20分を目安に、やけどの部分だけを冷やします。服は貼りついていれば脱がさず上から、貼りついていなければ早く外す。氷や保冷剤の直当てと民間療法の塗り薬は避け、水ぶくれは潰しません。
そして、範囲が広いときほど「冷やしすぎない」ことが大切になります。患部は冷やし、体は温める。この2つを同時にやりながら救急要請してください。
医師確認済み
ラボの小児科医(小児科専門医・アレルギー専門医)が「全文(応急処置の手順・冷却時間と保温・受診の目安・化学/電気やけど・花火とお祭りでの注意)」を確認 (2026/7/25)
あわせて読みたい
参考文献
-
ANZCOR Guideline 9.1.3 – First Aid for Burns. Australian and New Zealand Committee on Resuscitation. https://www.anzcor.org/home/first-aid/guideline-9-1-3-first-aid-for-burns ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15
-
First aid for burns. British Red Cross. https://www.redcross.org.uk/first-aid/learn-first-aid/burns ↩ ↩2 ↩3
-
American Academy of Pediatrics. Treating and Preventing Burns. HealthyChildren.org. https://www.healthychildren.org/English/health-issues/injuries-emergencies/Pages/Treating-and-Preventing-Burns.aspx ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
日本小児科医会「こどもの救急」. https://kodomo-qq.jp/ ↩
-
消費者庁「子どもの事故防止」(やけど・熱傷に関する注意喚起). https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/ ↩ ↩2
医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文(応急処置の手順・冷却時間と保温・受診の目安・化学/電気やけど・花火とお祭りでの注意)」を確認 (2026/7/25)
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