溶連菌感染症とは?症状・抗菌薬・登園の目安を小児科医が解説|自己判断で薬をやめない理由
この記事の目次 10項目
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「高い熱が出て、のどをすごく痛がる。でも、せきや鼻水はあまりない」。こう聞くと、外来では溶連菌を思い浮かべます。口を開けてもらうと、のどが真っ赤で、舌がイチゴのようにブツブツしている——溶連菌感染症の典型的なサインです。
溶連菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌という細菌によるのどの感染症です。多くの子どものかぜはウイルスが原因で抗菌薬が効きませんが、溶連菌は細菌なので抗菌薬がよく効きます。ただし、この病気には「症状が消えても薬を飲みきる」という、ほかの感染症とは違う大切なルールがあります。この記事では、症状の特徴、治療の考え方、登園の目安、そして家庭での注意点を整理します。
結論:よく効く薬を「最後まで飲みきる」
先に、この病気でいちばん大切なことをお伝えします。
- 溶連菌は細菌の感染症で、抗菌薬がよく効きます
- 飲みはじめると1〜2日で症状は良くなりますが、処方された日数を最後まで飲みきることが必須です
- 自己判断で中断するとリウマチ熱のリスクが残ります(急性糸球体腎炎は抗菌薬と無関係に起こることがあり、回復後の経過観察が大切です)
つまり、「早く治る薬をもらったから安心」ではなく、「良くなっても飲みきる」までがワンセットの病気です。順に見ていきます。
どんな病気?——症状の特徴
溶連菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌が起こす咽頭炎です。感染してから2〜5日の潜伏期間のあと、突然の発熱とのどの痛みで発症し、全身のだるさや嘔吐を伴うこともあります1。かかりやすいのは幼児から学童で、乳児は比較的まれです2。
かぜとの違いは、まず発症のしかたに出ます。突然の高熱とのどの強い痛みで始まる一方、かぜに多いせき・鼻水は目立ちません。診察では、次のようなサインも手がかりになります。
- のどが真っ赤で、扁桃に白い膿がつくことがある
- 舌の表面がイチゴのようにブツブツする(イチゴ舌)
- 体や首、わきなどに、細かくてざらざらした発疹(猩紅熱)1
ただし、これらがすべてそろうわけではありません。確定診断は、のどの粘液を綿棒でとる迅速抗原検査で行います。数分で結果が出るため、疑わしいときは検査を受けることが、適切な治療への近道です。後輩から「見た目で溶連菌と決めていいですか」と聞かれることがありますが、迷う例は多く、最後は検査に頼ります、と答えています。
治療——抗菌薬を「飲みきる」ことが核心
溶連菌の治療は、ペニシリン系などの抗菌薬が第一選択です1。飲みはじめると、多くは1〜2日で熱が下がり、のどの痛みも和らぎます。ここで油断しやすいのが、この病気の落とし穴です。
症状が消えても、体の中の菌は完全には退治できていません。処方された日数(多くは10日前後)を最後まで飲みきる。そうしてはじめて菌をしっかり除去でき、合併症のリスクを下げられます。症状は1〜2日で軽くなっても、菌を除ききるにはこの日数が必要だと考えてください。「元気になったからもういいだろう」と自己判断でやめてしまうと、菌が生き残り、再発や、次に説明する合併症につながることがあります。
わが家でも上の子が溶連菌にかかりました。数日で症状が落ち着き、「もう飲まなくていいのでは」と迷ったものです。それでも10日間きっちり飲みきったのは、この合併症のことを知っていたからです。飲ませ忘れが続くと効果が落ちるので、食事とセットにするなど、飲み忘れない工夫をおすすめします。
のどの痛みで水分がとりにくいときは、脱水に注意してください。しみにくい経口補水液や麦茶を、少量ずつこまめに飲ませてあげましょう。
なぜ飲みきるのか——合併症のこと
抗菌薬を飲みきる理由は、まれですが重い合併症を防ぐためです。溶連菌の感染後、1〜数週間たってから起こることがある合併症に、次のものがあります1。
- リウマチ熱(心臓の弁や関節に炎症が起こることがある)
- 急性糸球体腎炎(腎臓の炎症。むくみや血尿、尿の減少などで気づかれる)
このうちリウマチ熱は、抗菌薬で菌をしっかり除去することで、発症リスクを大きく下げられることがわかっています。だからこそ、症状が消えても飲みきることが大切です。
一方、急性糸球体腎炎は、溶連菌に対する体の免疫反応によって起こるため、抗菌薬を飲んでも必ず防げるわけではありません。だからこそ、回復後の数週間は、むくみ・血尿・尿量の減少などのサインに気をつけ、あれば受診することが大切です。
短期間に何度も溶連菌にかかる子もいます。のどに菌を保有している家族(保菌者)がいて、家庭内できょうだい間などにうつし合う「ピンポン感染」が背景にあることがあります。繰り返す場合は、家族の検査や治療も含めて主治医に相談してください。
なお、感染から数週間のあいだに、まぶたのむくみ・血尿・尿量の減少・急な体重増加などがあれば、腎炎のサインかもしれません。その場合は受診してください。飲みきっていれば過度に心配する必要はありませんが、頭の片隅に置いておくと安心です。
受診とホームケアの目安
すでにのどの痛みと高熱があるなら、まずは検査のために受診するのが基本です。診断がついて抗菌薬を飲みはじめたあとは、家庭でのケアが中心になります。
つらい発熱には、子ども用の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)を使ってかまいません。使う目安は熱の数字より本人のつらさで、用法・用量は主治医や薬剤師の指示に従ってください。
次のようなときは、あらためて受診してください。
- 水分がとれずおしっこが半日以上出ない・ぐったりしている(脱水のサイン)
- 抗菌薬を飲んで2〜3日たっても、熱やのどの痛みが良くならない
- 回復後に、むくみ・血尿・尿量の減少がある(腎炎のサイン)
夜間や休日で迷ったときは、#8000(子ども医療電話相談)に相談できます。
登園・登校はいつから?
溶連菌感染症は、適切な抗菌薬を飲みはじめてから24〜48時間が経過し、全身状態がよければ登園・登校が可能とされています3。抗菌薬を始めると感染力は速やかに下がるため、長い出席停止は必要ありません。
大切なのは、登園を再開しても薬は飲みきることです。「登園できる=治りきった」ではありません。園によっては登園届の提出を求められることがあるので、園と主治医の指示を確認してください。
よくある質問
溶連菌とかぜは、どう見分けますか?
見た目だけで確実に見分けるのは難しく、最終的にはのどの検査(迅速抗原検査)で確定します。ただし、溶連菌を疑うヒントはあります。突然の高熱とのどの強い痛みがあるのに、せき・鼻水が目立たない、のどが真っ赤で白い膿がつく、舌がイチゴのようにブツブツする(イチゴ舌)、体や首に細かい発疹が出る、といった特徴です。かぜはせき・鼻水を伴うことが多いのが対照的です。疑わしいときは、検査を受けに受診してください。
抗菌薬は、症状が良くなったらやめてもいいですか?
やめないでください。これが溶連菌でいちばん大切な点です。抗菌薬を飲みはじめると1〜2日で熱も痛みも良くなりますが、体の中の菌はまだ完全には退治できていません。処方された日数(多くは10日前後)を最後まで飲みきることで、リウマチ熱の発症リスクを下げられます。急性糸球体腎炎は体の免疫反応で起こるため抗菌薬では必ずしも防げませんが、飲みきりと回復後の経過観察が基本です。良くなったからと途中でやめると、菌が生き残り再発につながることもあります。必ず飲みきりましょう。
いつから登園・登校できますか?
適切な抗菌薬を飲みはじめてから24〜48時間が経過し、全身状態がよければ登園・登校が可能になるのが一般的な目安です。抗菌薬を始めると感染力は速やかに下がるため、長期の出席停止は必要ありません。ただし薬は登園後も飲みきることが前提です。園によって登園届が必要な場合があるので、最終的には園と主治医の指示に従ってください。
お風呂に入れてもいいですか?
熱が下がって元気があれば、入浴やシャワーはかまいません。体を清潔にするのはむしろよいことです。ただし高熱でぐったりしているときは無理をせず、湯冷めに注意して短時間で。タオルの共用は避けてください。
のどの検査は痛いですか?
強い痛みはありません。綿棒でのどの奥をこすって数秒で終わります。ただ、のどの奥に触れるため、えずいて(嘔吐反射で)一瞬つらそうにする子はいます。すぐ終わること、痛い注射ではないことを、受ける前にお子さんに伝えてあげると安心です。数分で結果が出ます。
きょうだいや家族にもうつりますか?検査は必要ですか?
うつることがあります。溶連菌はせきやくしゃみの飛沫でうつり、家庭内はうつりやすい環境です。手洗い、タオル・食器の共用を避ける、といった基本の対策をしてください。ただし、症状のない家族全員がすぐ検査・治療をする必要は通常ありません。家族にのどの痛みや発熱など症状が出たときに、受診して検査を受けるのが基本です。心配なときはかかりつけ医に相談しましょう。
まとめ
溶連菌感染症は、抗菌薬がよく効く一方で、「飲みきる」ことが何より大切な病気です。押さえておきたいのは次の点です。
- 突然の高熱・のどの強い痛みで、せき・鼻水が目立たないときは溶連菌を疑い、検査を
- 抗菌薬は1〜2日で効くが、処方された日数を最後まで飲みきる。自己判断で中断しない
- 飲みきる主な理由はリウマチ熱を防ぐため。急性糸球体腎炎は抗菌薬と無関係に起こりうるので、回復後のサインにも注意を
- 登園は抗菌薬開始後24〜48時間かつ全身状態がよければ可能。ただし薬は飲みきる
「良くなっても、飲みきる」。この一点さえ守れば、こわがりすぎる必要のない病気です。検査と治療を受け、最後まで薬を飲みきってあげてください。
医師確認済み
labo-pediatricianが「全文」を確認 (2026/7/11)
最終更新: 2026年7月11日
参考資料
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- ヘルパンギーナとは?高熱とのどの水疱の対処法を小児科医が解説
- 子どもの高熱への対処法|受診の目安と家庭でのケア
- インフルエンザと風邪の違い|見分け方と受診の目安
- 経口補水液の正しい使い方|子どもの脱水対策
参考文献
-
国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/tsls/392-encyclopedia/340-group-a-streptococcus-intro.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
厚生労働省「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-17.html ↩
-
厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」 https://www.mhlw.go.jp/content/001005138.pdf ↩
医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/7/11)
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