子どもの咳が止まらないとき — 原因と受診の目安
この記事の目次
この記事のポイント
- 風邪の咳は7〜10日で改善する。2週間以上続く咳は別の原因を疑う
- 咳の種類(湿性 / 乾性 / 犬吠様)で原因の見当がつく
- 6歳未満への市販咳止め(特にコデイン含有)は推奨されていない
- 夜間に繰り返す乾いた咳は喘息の可能性がある
- 1歳以上の子にはハチミツが市販咳止めよりも有効とするエビデンスがある
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「咳が1週間以上止まらないんです」——外来でこう言われたとき、最初に確認するのは咳の「タイプ」と「いつからか」です。
咳は体が気道の異物や分泌物を排出するための防御反応です。止めればよいというものではありません。ただ、夜間に咳が続いて眠れない、食事のたびに咳き込む——こうした状態が長引けば、子どもも親も消耗します。
この記事では、咳の種類ごとの原因と、どのタイミングで受診すべきかを整理します。
咳の種類と原因の手がかり
湿った咳(湿性咳嗽)
ゴホゴホ、ゲホゲホと痰が絡むような咳です。
主な原因は以下のとおりです。
- 風邪の後遺症(感染後咳嗽): 風邪が治った後も気道の炎症が残り、痰が出続けることがあります。2〜3週間で自然に改善することが多い1
- 副鼻腔炎(後鼻漏): 黄色や緑色の鼻水がのどに垂れ込んで咳を引き起こします。横になると悪化するため、夜間に目立つ
- 気管支炎: ウイルスや細菌が気管支に感染し、痰の多い咳が続く
湿った咳は「痰を出そうとしている」咳なので、咳止めで無理に抑えると痰が排出されず、かえって悪化する場合があります。
乾いた咳(乾性咳嗽)
コンコン、カラカラと痰の絡まない咳です。
- 咳喘息: 気管支喘息の前段階ともいわれる状態。ゼーゼー音は聞こえないが、乾いた咳が数週間続く2
- 気管支喘息: 気道の慢性的な炎症により、夜間や早朝に乾いた咳が繰り返す
- アレルギー性咳嗽: ハウスダスト、ダニ、花粉などのアレルゲンが原因。特定の環境で悪化する
- マイコプラズマ肺炎: 学童期に多い。発熱は軽度だが、乾いた咳が長期間(3〜4週間)続くことがある
犬吠様の咳(クループ)
「ケンケン」「バウバウ」と犬が吠えるような独特の咳です。
クループ症候群(急性喉頭炎)が原因です。パラインフルエンザウイルスなどの感染で喉頭が腫れ、空気の通り道が狭くなることで特徴的な咳が出ます。
- 多くは生後6ヶ月〜3歳に発症
- 夜間に突然始まり、朝には軽くなるパターンが多い
- 軽症なら加湿と安静で数日で改善
息を吸うときにヒューヒュー(吸気性喘鳴)が聞こえる、呼吸が苦しそう、顔色が悪い場合は、すぐに受診してください。
2週間以上続く咳 — 考えるべき原因
風邪の咳は通常7〜10日で改善に向かいます。2週間を超えて続く場合は、以下の可能性を検討します1。
気管支喘息
子どもの長引く咳の原因として最も多いもののひとつです。特に以下のパターンがあれば喘息を疑います。
- 夜間や早朝に咳が繰り返す
- 運動後に咳が出る
- 風邪を引くたびに咳が長引く
- 両親にアレルギー疾患(喘息・アトピー・花粉症)がある
喘息は聴診器でゼーゼー音が聞こえることが診断の手がかりになりますが、咳しか症状がない「咳喘息」もあります。疑わしい場合は、気管支拡張薬の試験的投与で反応を見ることがあります2。
後鼻漏(副鼻腔炎)
鼻水がのどに垂れ込んで咳を引き起こす状態です。子どもは鼻をかむのが上手ではないため、鼻汁がのどに流れ込みやすいです。
- 黄色・緑色の鼻汁が10日以上続いている
- 横になると咳が悪化する
- 口臭がある
抗菌薬の投与が必要な場合と、自然治癒を待てる場合があります。
百日咳
ワクチン(四種混合)を接種していても、免疫が低下すると感染することがあります。
- 連続する短い咳の後に「ヒュー」と息を吸い込む(whoop)
- 咳き込んだ後に嘔吐する
- 夜間に発作的な咳が出る
乳児(特に生後6ヶ月未満)では重症化リスクが高いため、疑わしい場合は早めに受診してください。
市販咳止めの注意点
6歳未満への使用は慎重に
2019年以降、コデイン含有の医薬品は12歳未満に禁忌となっています。コデインは体内でモルヒネに変換されますが、代謝速度に個人差が大きく、小児では呼吸抑制のリスクがあるためです。
市販の咳止めシロップの多くにはデキストロメトルファンなどの成分が含まれていますが、小児における有効性のエビデンスは限定的です。アメリカ小児科学会も、6歳未満への市販咳止めの使用を推奨していません。
ハチミツのほうが有効とする研究
1歳以上の子どもの咳に対して、就寝前にハチミツ(ティースプーン1杯、約5ml)を与えることが、市販咳止めよりも咳の頻度と重症度を減らしたという複数の研究結果があります。
ただし、1歳未満の乳児にハチミツは絶対に与えないでください。乳児ボツリヌス症のリスクがあります。
家庭でできるケア
咳が続く子どもに対して、家庭で実践できることは以下のとおりです。
- 部屋の加湿: 湿度50〜60%を目安に。乾燥した空気は気道を刺激する
- こまめな水分補給: のどの粘膜を潤すことで咳が緩和されることがある
- 上体をやや起こして寝かせる: 後鼻漏による咳は、枕を少し高くするだけで軽減する場合がある
- 鼻吸い(乳幼児): 鼻汁をこまめに吸引することで後鼻漏を減らす
- 受動喫煙を避ける: タバコの煙は気道を刺激し、咳を悪化させる最大の環境因子
すぐに受診すべきサイン
以下の症状がある場合は、様子を見ずに医療機関を受診してください。
- 呼吸が速い、息を吸うときに胸がへこむ(陥没呼吸)
- 唇や爪が青紫色(チアノーゼ)
- ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音が目立つ
- 咳き込んで嘔吐を繰り返す
- 水分が取れない
- 3ヶ月未満の乳児の咳
- 異物を飲み込んだ可能性がある(突然始まった咳)
医師確認済み
ラボの小児科医(小児科専門医・アレルギー専門医)が「医学的正確性の検証」を確認 (2026/6/30)
参考資料
あわせて読みたい
参考文献
-
日本小児科学会 小児の咳嗽診療ガイドライン https://www.jpeds.or.jp/ ↩ ↩2
-
日本小児アレルギー学会 小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023 https://www.jspaci.jp/ ↩ ↩2
医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「医学的正確性の検証」を確認 (2026/6/30)
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