子どもの便秘 — 回数より「かたさ」で見る。便塞栓・薬・受診の目安を小児科医が解説
この記事の目次 11項目
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「3日出ていないんです」。外来でよく聞く言い出しですが、私が次に聞くのは回数ではありません。「出たとき、痛がりますか」「トイレで足を突っ張って我慢していませんか」。
子どもの便秘は、回数だけを見ていると見誤ります。毎日出ていても便秘の子がいますし、3日に1回でも問題ない子がいます。分かれ目は、便のかたさと、痛みと、我慢しているかどうかです。
この記事では、なぜ我慢が悪循環になるのか、下着が汚れるのは下痢ではなく便秘のことがあるのはなぜか、薬をどう使い分けるのかを整理します。
結論:見るのは回数ではありません
- 回数より便のかたさと痛み。痛い排便が我慢を生み、我慢が便秘を悪くします
- 毎日少しずつ下着が汚れるのは、下痢ではなく便秘のサインのことがあります
- 治療はたまった便を外す→やわらかい便を保つの2段階。順番が逆だとうまくいきません
- 食物繊維と水分は土台ですが、それだけで治ることは多くありません
- 生まれつきの病気を疑う目印があります
便秘は「回数」では定義されていません
国際的な診断基準では、排便が週2回以下であることに加えて、我慢する姿勢をとる、痛い便やかたい便が出る、直腸に大きな便のかたまりがある、便を漏らすことがある、といった項目のうち複数が当てはまるかどうかで判断します1。
つまり、回数はいくつかある目印のひとつにすぎません。
家庭で見るなら、この3つで足ります。
- 出たときの便がコロコロ、または太くてかたい
- 出すときに痛がる、いきんで泣く、血がつく
- トイレで足を突っ張る、隅に隠れる、しゃがんで固まる
3つ目が特に大事です。親御さんはこれを「出そうとしている」と受け取ることが多いのですが、実際は逆で、出さないように我慢している姿勢です。ここを取り違えると、対応が丸ごとずれます。
痛い排便が、便秘を作ります
しくみは単純です。
かたい便が出て痛かった。だから次に便意が来たとき、子どもは我慢する。我慢すると便は直腸にとどまり、水分が抜けてさらにかたくなる。次はもっと痛い。だからもっと我慢する。
この輪が回りはじめると、食事を変えるだけでは止まりません。痛くない排便を一定期間続けて、我慢する癖そのものを消す必要があります。だから治療に数か月かかります。
外来で「もう治ったので薬をやめました」と言われて、2週間後に元に戻って戻ってくる。これは薬が効かなかったのではなく、輪が切れる前にやめてしまったためです。
下着が汚れるのは、下痢ではありません
これがいちばん誤解されるところです。
直腸に大きな便のかたまりが居座ると、そのすき間からやわらかい便がしみ出します。下着に少量ずつ茶色い汚れがつき、毎日続きます。本人に自覚はなく、止めることもできません。
親御さんからは「下痢が続いている」「わざとしている」「トイレトレーニングが後退した」という形で相談されます。実際には、重い便秘のサインです1。
ここで止痢薬を使うと悪化します。叱るのはもっとよくありません。本人にはどうにもできないことなので、叱られた経験がトイレそのものへの抵抗になります。
必要なのは、たまったかたまりを外すことです。これは家庭では難しいので、この状態に気づいたら受診してください。
治療には順番があります
第1段階:たまった便を外す
直腸に大きなかたまりがある状態では、日々の薬を飲ませても効きません。手前が詰まっているからです。まず外します1。
方法は、飲み薬を数日多めに使う方法と、浣腸を使う方法があります。年齢と、たまり具合と、本人が飲めるかどうかで決めます。数日で終わる段階です。
第2段階:やわらかい便を保つ
外したあとが本番です。痛くない排便を続けて、我慢する癖を消していきます。ここに数か月かかります。
いま小児で中心になっているのは、腸に水を引き込んで便をやわらかくするタイプの薬です。日本ではマクロゴール4000と電解質を配合したモビコールが、2歳以上の慢性便秘症に使えます2。水に溶かして飲むタイプで、量を細かく調整できるのが利点です。
酸化マグネシウムも長く使われてきました。ただしこちらは、腎機能が正常で通常の量でも高マグネシウム血症が起きうるとして、PMDAから注意喚起が出ています。必要最小限にとどめ、長期に使うときは血液検査で確認することが求められています3。吐き気、力が入らない、ぼんやりする、といった症状が出たら中止して受診してください。
腸を直接刺激するタイプの薬は、長期に続けるものではありません。「便秘薬は癖になる」という話は、主にこのタイプについてのものです。腸に水を引き込むタイプは癖になりません。ここを混同したまま薬を怖がって、結果的に便秘を長引かせている家庭が少なくありません。
第3段階:食事と生活
土台として大切ですが、順番は最後です。すでに直腸に大きなかたまりがある状態で食物繊維だけ増やすと、お腹が張って苦しくなることがあります。
食物繊維の目標量は、3〜5歳で1日8g以上とされています4。いも類、豆類、果物から少しずつ増やしてください。一度に増やすとお腹が張るので、1週間単位で足していくくらいがちょうどいいです。
水分は、便をやわらかくするために足すというより、足りていない状態を作らないという意味で大事です。1〜3歳で1日600〜800mL程度が実用的な目安になりますが、活動量と季節で変わります。麦茶や水が基本で、ジュースは糖分が多いので日常的にはすすめません。
そして朝食後にトイレに座る習慣です。食事のあとは腸が動きやすくなります。出なくてもかまわないので、5分だけ座る。足がぶらぶらすると力が入らないので、踏み台を置いて足の裏をつけてください。これは効果のわりに見落とされがちです。
わが家の下の子も、踏み台を置いた週から急に出るようになりました。それまで便座の高さが合っていなかっただけでした。
生まれつきの病気を疑う目印
子どもの便秘のほとんどは、腸そのものに病気がない機能性のものです。ただし、次のようなときは別の原因を調べます1。
- 生後48時間以内に胎便(最初の黒緑の便)が出なかった
- 生後まもなくから便秘がある
- 体重が増えない、身長の伸びが悪い
- お腹が異常に張っている、繰り返し吐く
- 血便がある(肛門が切れた鮮血を除く)
- 肛門の位置や形がふつうと違う
- 足の力が弱い、おしりの割れ目の上にくぼみや毛の房がある
ヒルシュスプルング病や甲状腺の病気、脊髄の異常などが背景にあることがあります。頻度としてはまれですが、見つければ対応が変わるので、当てはまるものがあれば受診時に伝えてください。
受診の目安
- 5日以上出ていない
- お腹が張って痛がる、吐いている
- 下着が毎日汚れる
- 排便のたびに血がつく、痛がって泣く
- 自宅での工夫を2週間続けても変わらない
- 上の「生まれつきの病気を疑う目印」に当てはまる
便の写真を撮っておくと診察が早くなります。かたさと太さは、言葉で伝えるより見てもらうほうが確実です。
よくある質問
3日出ていません。すぐ受診したほうがいいですか?
回数だけでは決めません。3日空いても、出たときの便がやわらかくて痛がらず、機嫌も食欲も普通なら急ぎません。
逆に毎日出ていても、コロコロで痛がって、途中で我慢しているようなら便秘として対応します。見るのは回数ではなく、かたさと痛みと我慢する様子です。ただし、お腹が張って痛がる、吐いている、5日以上出ていない、という場合は受診してください。
毎日少しずつ下着が汚れます。下痢でしょうか?
多くは下痢ではなく、便秘です。直腸に大きな便のかたまりが居座ると、そのすき間からやわらかい便がしみ出してきます。本人に自覚はなく、止めることもできません。
ここで止痢薬を使ったり叱ったりすると悪化します。必要なのは、たまったかたまりを外すことです。これは家庭では難しいので、受診してください。しつけの問題ではありません。
便秘の薬は癖になりませんか?
薬の種類によります。腸を直接刺激するタイプは長く続けるものではありませんが、いま小児で主に使われるのは腸に水を引き込んで便をやわらかくするタイプで、こちらは癖になりません。
むしろ、量が足りないまま中途半端にやめると、痛い排便がまた始まって元に戻ります。やわらかい便が痛みなく出る状態を数か月続けて、我慢する癖が消えてから減らします。自己判断で急にやめないでください。
浣腸や綿棒刺激は毎日使ってもいいですか?
たまった便を外す目的で、決められた期間だけ使うのは問題ありません。困るのは、毎日使いながら日々の薬を使っていない状態です。それだと出すたびに痛い思いをするので、我慢する癖が続きます。
順番としては、まずかたまりを外し、そのあとは飲み薬でやわらかい便を保つ。浣腸は困ったときの手段に戻します。使い方は主治医と決めてください。
食物繊維を増やせば治りますか?
土台としては大切ですが、それだけで治ることは多くありません。すでに直腸に大きなかたまりがある状態で繊維だけ増やすと、お腹が張って苦しくなることがあります。
順番があって、かたまりを外す、薬でやわらかい便を保つ、そのうえで食事と生活を整える、です。食物繊維の目標量は3〜5歳で1日8g以上とされています。いも類・豆類・果物から少しずつ増やしてください。
まとめ
子どもの便秘で覚えておいてほしいのは、回数ではなくかたさと痛みを見ること、そして毎日下着が汚れるのは便秘のサインだということの2つです。
治療には順番があります。たまった便を外し、やわらかい便を数か月保ち、そのあいだに食事と生活を整える。この順番を守ると、多くの子は落ち着きます。逆に、食事だけ変えて薬を早くやめると、まず戻ります。
痛くない排便が続けば、子どもは我慢しなくなります。そこまで行けば終わりが見えます。焦らず、しかし途中でやめないでください。
医師確認済み
labo-pediatricianが「全文」を確認 (2026/8/2)
最終更新: 2026年8月2日
参考資料
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- トイレトレーニングの進め方 — 開始時期・ステップ・つまずき対処
- 感染性胃腸炎(ノロ・ロタ)|吐いた・下痢のときの家庭ケア
- 子どもが高熱を出したとき — 受診の目安とホームケア
参考文献
-
Tabbers MM, DiLorenzo C, Berger MY, et al. Evaluation and treatment of functional constipation in infants and children: evidence-based recommendations from ESPGHAN and NASPGHAN. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2014;58(2):258-274. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24345831/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4
-
モビコール配合内用剤LD/HD 添付文書(PMDA医薬品情報検索・効能効果および2歳以上の用法用量) https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2359110B2025_1_01/ ↩
-
医薬品医療機器総合機構(PMDA)「酸化マグネシウム製剤 適正使用に関するお願い — 高マグネシウム血症」(2020年8月) https://www.pmda.go.jp/files/000235889.pdf ↩
-
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(食物繊維の目標量) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html ↩
医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/8/2)
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