感染性胃腸炎(ノロ・ロタ)|吐いた・下痢のときの家庭ケアと受診の目安を小児科医が解説
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感染性胃腸炎(ノロ・ロタ)|吐いた・下痢のときの家庭ケアと受診の目安を小児科医が解説

公開: 2026年7月14日 更新: 2026年7月14日

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夜中に子どもが急に「オエッ」と吐いて、布団もパジャマも汚れて、本人も泣いている。翌朝からは下痢も始まる——冬の外来でいちばん多い相談のひとつが、この感染性胃腸炎です。わが家でも、上の子が保育園でもらってきて、数日後に家族全員がダウンした冬がありました。

つらい病気ですが、家庭でやるべきことははっきりしています。いちばんの目標は、脱水を防ぐことです。

結論:特効薬より「少量ずつの水分」。脱水サインが出たら受診

感染性胃腸炎(ノロ・ロタなど)はウイルスによる胃腸の感染で、多くは数日で自然に治ります。抗菌薬は効きません。家庭ケアの要点は次の3つです。

  • 治療の中心は脱水予防の水分補給。経口補水液を少量ずつ・頻回に与えるのが基本です1
  • おしっこが半日以上出ない・涙が出ない・ぐったりは脱水の危険サイン。すぐ受診してください2
  • ノロにアルコールは効きにくい。嘔吐物は塩素系漂白剤で消毒し、家庭内感染を防ぎます3

順に、病気の正体から家庭ケア、受診の目安まで整理します。

感染性胃腸炎とは——ノロとロタの違い

感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌などが胃腸に感染して、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・発熱などを起こす病気の総称です1。子どもの冬〜春に多いのは、ウイルス性のノロウイルスとロタウイルスです。

ノロウイルスロタウイルス
流行する季節冬(12〜3月ごろ)春先(3〜5月ごろ)が中心
潜伏期間おおむね1〜2日1〜4日
主な症状吐き気・嘔吐・下痢・発熱白っぽい水様便・嘔吐・発熱
かかりやすい年齢幅広い年齢乳幼児に多い
ワクチンなしあり(定期接種)

出典: 厚生労働省・JIHS感染症情報1345

どちらもウイルスなので、抗菌薬(抗生物質)は効きません1。特効薬に頼るのではなく、脱水を防ぎながら回復を待つのが基本になります。うつる経路は、便や嘔吐物に含まれるウイルスが手指を介して口に入る「糞口感染」が中心です3

家庭でのケア——経口補水の進め方

家庭ケアのいちばんの主役は、経口補水です。ポイントは「少量ずつ・頻回に」。焦って一度にたくさん飲ませると、かえって吐いてしまいます。

1. 吐き気が落ち着くまで待つ

嘔吐した直後は胃が過敏になっています。まずは30分ほど胃を休ませ、吐き気が落ち着くのを待ちましょう2

2. ごく少量から、少しずつ

経口補水液を、ティースプーン1杯(5mLほど)から。5〜10分おきに1杯ずつ与え、吐かなければ少しずつ量を増やし、間隔を広げていきます。もし吐いたら、また30分休んで、少量からやり直します。この「少量頻回」が、脱水を防ぐいちばんのコツです12

3. 水やお茶だけにしない

下痢や嘔吐では、水分と一緒に塩分(電解質)も失われます。水やお茶だけでは電解質が補えないため、電解質と糖のバランスを整えた経口補水液が向いています。柑橘系のジュースは胃を刺激するので避けましょう。なお、イオン飲料や経口補水液を長期間・大量に与え続けることは、別の栄養の偏り(ビタミンB1不足など)につながることもあるため、あくまで体調不良時の水分補給として使ってください6

経口補水液の選び方や、スポーツドリンクとの違いは、経口補水液の選び方・飲ませ方でくわしく解説しています。

4. 食べられそうなら、消化のよいものを少しずつ

水分がとれて食欲が戻ってきたら、おかゆ・うどん・すりおろしりんご・バナナなど消化のよいものを少量から。脂っこいものや乳製品はしばらく控えめに。食欲がなければ、無理に食べさせなくても大丈夫です。まずは水分がいちばんです。

なお、市販の下痢止め薬を子どもに自己判断で使うのは避けてください。下痢はウイルスを体の外に出す反応でもあり、下痢止めで無理に止めると回復を遅らせることがあります1

脱水の危険サイン——こんなときはすぐ受診

家庭ケアで見ていて、次のような脱水のサインが出たら、点滴などが必要なこともあります。早めに受診してください2

  • おしっこが半日(8時間以上)出ない/オムツがずっと濡れない、尿の色が濃い
  • 泣いても涙が出ない、口や舌が乾いている
  • ぐったりして反応が鈍い、うとうとして起こしにくい
  • 目が落ちくぼんで見える、乳児で頭のやわらかい部分(大泉門)がへこんでいる
  • 手足が冷たく、皮膚の色が悪い
  • 水分を飲んでも飲んでもすぐ吐き、まったく受けつけない

とくに月齢の小さい赤ちゃんは、あっという間に脱水が進みます。判断に迷うときは、小児救急電話相談「#8000」に電話すると、看護師や医師に相談できます2

家庭内でうつさない——嘔吐物の処理と消毒

感染性胃腸炎は家庭内でうつりやすい病気です。とくにノロウイルスは、アルコール消毒が効きにくいのが特徴です3。嘔吐物や便の処理には、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を薄めたものを使います。

厚生労働省の目安は次のとおりです3

  • 嘔吐物・便が付いた床など=約0.1%(1000ppm):500mLの水に、家庭用塩素系漂白剤をペットボトルキャップ2杯(約10mL)
  • ドアノブ・手すりなど=約0.02%(200ppm):2Lの水に、同じくキャップ2杯(約10mL)

※製品によって塩素濃度が異なるため、必ずパッケージの希釈表示も確認してください。

処理の手順は、①使い捨て手袋とマスクを着け、②嘔吐物をペーパータオルで外側から内側へ静かに拭き取り、③その場所を上の濃度の消毒液でふき、しばらくおいてから水拭き、④汚物や手袋はビニール袋に密閉して捨てる、という流れです。金属は塩素で傷むことがあるので、消毒後は水拭きしておきます。処理のあとは、石けんと流水でていねいに手を洗いましょう3

ロタウイルスはワクチンで重症化を防ぐ

ノロにはワクチンがありませんが、ロタウイルスには予防接種があります。2020年10月から定期接種(公費)になりました5

ロタウイルスは、乳幼児に強い下痢と嘔吐を起こし、脱水で入院が必要になることもある病気です。まれにけいれんや脳炎・脳症などの合併症も報告されています4。ワクチンは口から飲むタイプで、重症化を減らすことが期待されています。

注意したいのは、接種を始める時期に上限があることです。生後早い時期(標準では生後2か月)から始める必要があるため、生後2か月からの予防接種スケジュールの中で、かかりつけ医と相談して早めに計画しましょう5

登園はいつから

保護者からよく聞かれるのが、登園の時期です。感染性胃腸炎は、インフルエンザのように「何日休む」と法律で一律に決められてはいません7

一般的な目安は、嘔吐や下痢が治まり、いつもどおりの食事がとれるようになることです。全身状態が戻っていれば登園できますが、最終的には園の方針や医師の指示に従ってください。なお、症状が治まったあとも便の中に2〜3週間ほどウイルスが出続けることがあるため、オムツ替えや排便後の手洗いは、しばらくていねいに続けましょう7

よくある質問

子どもが吐いています。すぐに水分を飲ませたほうがいいですか?

吐いた直後に飲ませると、また吐きがちです。30分ほど胃を休ませてから、経口補水液をティースプーン1杯(5mL)ほどのごく少量で始め、5〜10分おきに増やしていきます。飲んでもすぐ吐き、半日以上おしっこが出ない・ぐったりするときは受診してください12

経口補水液がありません。スポーツドリンクや水でも大丈夫ですか?

軽い症状の水分補給には役立ちますが、スポーツドリンクは糖分が多く塩分が少なめで、失われた電解質を補うには理想的ではありません。水やお茶だけでも塩分は補えません。体調を崩す前に経口補水液を1〜2本備えておくと安心です1

ノロウイルスにアルコール消毒は効きますか?

効きにくいです。嘔吐物や便が付いた場所は約0.1%(1000ppm)、ドアノブなどは約0.02%(200ppm)の次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で消毒します。手洗いは石けんと流水が基本です3

ロタウイルスのワクチンは受けたほうがいいですか?

2020年10月から定期接種(公費)です。重い下痢・嘔吐や合併症を減らすことが期待されます。始める時期に上限があるので、生後2か月からのスケジュールで早めにかかりつけ医と相談してください5

保育園はいつから行けますか?

法律で一律の日数は決まっていません。嘔吐・下痢が治まり、いつもどおり食べられるようになるのが目安です。園の方針や医師の指示に従ってください。便へのウイルス排出はしばらく続くため、手洗いは続けましょう7

まとめ:脱水を防げば、多くは家で乗り切れる

感染性胃腸炎は、つらいけれど多くは数日で回復する病気です。抗菌薬や特効薬に頼るより、脱水を防ぐことが家庭ケアの中心になります。

  • 経口補水液を少量ずつ・頻回に。吐いても30分休んでやり直す1
  • おしっこが半日出ない・涙が出ない・ぐったりは受診のサイン。迷えば#80002
  • 嘔吐物は塩素系漂白剤で消毒し、家庭内感染を防ぐ3
  • ロタウイルスはワクチン(定期接種)で重症化を防げる。開始時期に上限あり5

夜中の嘔吐は、親のほうもぐったりします。でも、やることは「少しずつ水分」と「脱水サインの見張り」。まずはこの2つに集中すれば、多くのお子さんは家で乗り切れます。

参考文献

  1. ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)/感染性胃腸炎の治療は対症療法が中心で、脱水予防の水分・栄養補給が重要。抗菌薬は無効、下痢止めは回復を遅らせることがある https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html 2 3 4 5 6 7 8 9

  2. Signs of Dehydration in Infants & Children|HealthyChildren.org(米国小児科学会 AAP)/尿量減少・涙が出ない・口の乾き・ぐったり・大泉門陥凹などは脱水のサイン。少量頻回の経口補水の考え方。日本では小児救急電話相談#8000も利用できる https://www.healthychildren.org/English/health-issues/injuries-emergencies/Pages/dehydration.aspx 2 3 4 5 6 7

  3. ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)/ノロウイルスはアルコールが効きにくく、次亜塩素酸ナトリウムが有効。嘔吐物・便の処理は約0.1%(1000ppm)、環境は約0.02%(200ppm) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html 2 3 4 5 6 7 8

  4. ロタウイルスによる感染性胃腸炎|国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト/乳幼児に多く、脱水・けいれん・脳炎脳症などの合併症がありうる https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/rotavirus-infectious-gastroenteritis/index.html 2

  5. ロタウイルスワクチン|厚生労働省/2020年10月1日から定期接種。生後早期に開始し、接種開始時期に上限がある https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/rota/index.html 2 3 4 5

  6. 日本小児科学会「食育」資料/乳幼児にイオン飲料を長期・多量に与え続けるとビタミンB1(チアミン)欠乏をきたすことがあるとの注意喚起 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/shokuiku_12-3.pdf

  7. 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)|こども家庭庁/嘔吐・下痢が治まり普段の食事がとれることが登園のめやす。症状消失後も便中にウイルス排出が続く https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/kansensho-guideline 2 3

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小児科専門医・アレルギー専門医

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小児一般診療 アレルギー疾患(食物・アトピー・気管支喘息) 皮膚疾患 発達相談

「日々の外来で保護者から寄せられる疑問をもとに、ガイドラインと実臨床の両面から解説しています。」

小児科専門医・アレルギー専門医。二児の父。診療ガイドラインと論文に基づく医療解説と、親として本当に使ってよかった用品レビューを発信。

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