感染性胃腸炎(ノロ・ロタ)|吐いた・下痢のときの家庭ケアと受診の目安を小児科医が解説
この記事の目次
- 結論:特効薬より「少量ずつの水分」。脱水サインが出たら受診
- 感染性胃腸炎とは——ノロとロタの違い
- 家庭でのケア——経口補水の進め方
- 1. 吐き気が落ち着くまで待つ
- 2. ごく少量から、少しずつ
- 3. 水やお茶だけにしない
- 4. 食べられそうなら、消化のよいものを少しずつ
- 脱水の危険サイン——こんなときはすぐ受診
- 家庭内でうつさない——嘔吐物の処理と消毒
- ロタウイルスはワクチンで重症化を防ぐ
- 登園はいつから
- よくある質問
- 子どもが吐いています。すぐに水分を飲ませたほうがいいですか?
- 経口補水液がありません。スポーツドリンクや水でも大丈夫ですか?
- ノロウイルスにアルコール消毒は効きますか?
- ロタウイルスのワクチンは受けたほうがいいですか?
- 保育園はいつから行けますか?
- まとめ:脱水を防げば、多くは家で乗り切れる
- 参考文献
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夜中に子どもが急に「オエッ」と吐いて、布団もパジャマも汚れて、本人も泣いている。翌朝からは下痢も始まる——冬の外来でいちばん多い相談のひとつが、この感染性胃腸炎です。わが家でも、上の子が保育園でもらってきて、数日後に家族全員がダウンした冬がありました。
つらい病気ですが、家庭でやるべきことははっきりしています。いちばんの目標は、脱水を防ぐことです。
結論:特効薬より「少量ずつの水分」。脱水サインが出たら受診
感染性胃腸炎(ノロ・ロタなど)はウイルスによる胃腸の感染で、多くは数日で自然に治ります。抗菌薬は効きません。家庭ケアの要点は次の3つです。
- 治療の中心は脱水予防の水分補給。経口補水液を少量ずつ・頻回に与えるのが基本です1
- おしっこが半日以上出ない・涙が出ない・ぐったりは脱水の危険サイン。すぐ受診してください2
- ノロにアルコールは効きにくい。嘔吐物は塩素系漂白剤で消毒し、家庭内感染を防ぎます3
順に、病気の正体から家庭ケア、受診の目安まで整理します。
感染性胃腸炎とは——ノロとロタの違い
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌などが胃腸に感染して、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・発熱などを起こす病気の総称です1。子どもの冬〜春に多いのは、ウイルス性のノロウイルスとロタウイルスです。
| ノロウイルス | ロタウイルス | |
|---|---|---|
| 流行する季節 | 冬(12〜3月ごろ) | 春先(3〜5月ごろ)が中心 |
| 潜伏期間 | おおむね1〜2日 | 1〜4日 |
| 主な症状 | 吐き気・嘔吐・下痢・発熱 | 白っぽい水様便・嘔吐・発熱 |
| かかりやすい年齢 | 幅広い年齢 | 乳幼児に多い |
| ワクチン | なし | あり(定期接種) |
どちらもウイルスなので、抗菌薬(抗生物質)は効きません1。特効薬に頼るのではなく、脱水を防ぎながら回復を待つのが基本になります。うつる経路は、便や嘔吐物に含まれるウイルスが手指を介して口に入る「糞口感染」が中心です3。
家庭でのケア——経口補水の進め方
家庭ケアのいちばんの主役は、経口補水です。ポイントは「少量ずつ・頻回に」。焦って一度にたくさん飲ませると、かえって吐いてしまいます。
1. 吐き気が落ち着くまで待つ
嘔吐した直後は胃が過敏になっています。まずは30分ほど胃を休ませ、吐き気が落ち着くのを待ちましょう2。
2. ごく少量から、少しずつ
経口補水液を、ティースプーン1杯(5mLほど)から。5〜10分おきに1杯ずつ与え、吐かなければ少しずつ量を増やし、間隔を広げていきます。もし吐いたら、また30分休んで、少量からやり直します。この「少量頻回」が、脱水を防ぐいちばんのコツです12。
3. 水やお茶だけにしない
下痢や嘔吐では、水分と一緒に塩分(電解質)も失われます。水やお茶だけでは電解質が補えないため、電解質と糖のバランスを整えた経口補水液が向いています。柑橘系のジュースは胃を刺激するので避けましょう。なお、イオン飲料や経口補水液を長期間・大量に与え続けることは、別の栄養の偏り(ビタミンB1不足など)につながることもあるため、あくまで体調不良時の水分補給として使ってください6。
経口補水液の選び方や、スポーツドリンクとの違いは、経口補水液の選び方・飲ませ方でくわしく解説しています。
4. 食べられそうなら、消化のよいものを少しずつ
水分がとれて食欲が戻ってきたら、おかゆ・うどん・すりおろしりんご・バナナなど消化のよいものを少量から。脂っこいものや乳製品はしばらく控えめに。食欲がなければ、無理に食べさせなくても大丈夫です。まずは水分がいちばんです。
なお、市販の下痢止め薬を子どもに自己判断で使うのは避けてください。下痢はウイルスを体の外に出す反応でもあり、下痢止めで無理に止めると回復を遅らせることがあります1。
脱水の危険サイン——こんなときはすぐ受診
家庭ケアで見ていて、次のような脱水のサインが出たら、点滴などが必要なこともあります。早めに受診してください2。
- おしっこが半日(8時間以上)出ない/オムツがずっと濡れない、尿の色が濃い
- 泣いても涙が出ない、口や舌が乾いている
- ぐったりして反応が鈍い、うとうとして起こしにくい
- 目が落ちくぼんで見える、乳児で頭のやわらかい部分(大泉門)がへこんでいる
- 手足が冷たく、皮膚の色が悪い
- 水分を飲んでも飲んでもすぐ吐き、まったく受けつけない
とくに月齢の小さい赤ちゃんは、あっという間に脱水が進みます。判断に迷うときは、小児救急電話相談「#8000」に電話すると、看護師や医師に相談できます2。
家庭内でうつさない——嘔吐物の処理と消毒
感染性胃腸炎は家庭内でうつりやすい病気です。とくにノロウイルスは、アルコール消毒が効きにくいのが特徴です3。嘔吐物や便の処理には、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を薄めたものを使います。
厚生労働省の目安は次のとおりです3。
- 嘔吐物・便が付いた床など=約0.1%(1000ppm):500mLの水に、家庭用塩素系漂白剤をペットボトルキャップ2杯(約10mL)
- ドアノブ・手すりなど=約0.02%(200ppm):2Lの水に、同じくキャップ2杯(約10mL)
※製品によって塩素濃度が異なるため、必ずパッケージの希釈表示も確認してください。
処理の手順は、①使い捨て手袋とマスクを着け、②嘔吐物をペーパータオルで外側から内側へ静かに拭き取り、③その場所を上の濃度の消毒液でふき、しばらくおいてから水拭き、④汚物や手袋はビニール袋に密閉して捨てる、という流れです。金属は塩素で傷むことがあるので、消毒後は水拭きしておきます。処理のあとは、石けんと流水でていねいに手を洗いましょう3。
ロタウイルスはワクチンで重症化を防ぐ
ノロにはワクチンがありませんが、ロタウイルスには予防接種があります。2020年10月から定期接種(公費)になりました5。
ロタウイルスは、乳幼児に強い下痢と嘔吐を起こし、脱水で入院が必要になることもある病気です。まれにけいれんや脳炎・脳症などの合併症も報告されています4。ワクチンは口から飲むタイプで、重症化を減らすことが期待されています。
注意したいのは、接種を始める時期に上限があることです。生後早い時期(標準では生後2か月)から始める必要があるため、生後2か月からの予防接種スケジュールの中で、かかりつけ医と相談して早めに計画しましょう5。
登園はいつから
保護者からよく聞かれるのが、登園の時期です。感染性胃腸炎は、インフルエンザのように「何日休む」と法律で一律に決められてはいません7。
一般的な目安は、嘔吐や下痢が治まり、いつもどおりの食事がとれるようになることです。全身状態が戻っていれば登園できますが、最終的には園の方針や医師の指示に従ってください。なお、症状が治まったあとも便の中に2〜3週間ほどウイルスが出続けることがあるため、オムツ替えや排便後の手洗いは、しばらくていねいに続けましょう7。
よくある質問
子どもが吐いています。すぐに水分を飲ませたほうがいいですか?
吐いた直後に飲ませると、また吐きがちです。30分ほど胃を休ませてから、経口補水液をティースプーン1杯(5mL)ほどのごく少量で始め、5〜10分おきに増やしていきます。飲んでもすぐ吐き、半日以上おしっこが出ない・ぐったりするときは受診してください12。
経口補水液がありません。スポーツドリンクや水でも大丈夫ですか?
軽い症状の水分補給には役立ちますが、スポーツドリンクは糖分が多く塩分が少なめで、失われた電解質を補うには理想的ではありません。水やお茶だけでも塩分は補えません。体調を崩す前に経口補水液を1〜2本備えておくと安心です1。
ノロウイルスにアルコール消毒は効きますか?
効きにくいです。嘔吐物や便が付いた場所は約0.1%(1000ppm)、ドアノブなどは約0.02%(200ppm)の次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)で消毒します。手洗いは石けんと流水が基本です3。
ロタウイルスのワクチンは受けたほうがいいですか?
2020年10月から定期接種(公費)です。重い下痢・嘔吐や合併症を減らすことが期待されます。始める時期に上限があるので、生後2か月からのスケジュールで早めにかかりつけ医と相談してください5。
保育園はいつから行けますか?
法律で一律の日数は決まっていません。嘔吐・下痢が治まり、いつもどおり食べられるようになるのが目安です。園の方針や医師の指示に従ってください。便へのウイルス排出はしばらく続くため、手洗いは続けましょう7。
まとめ:脱水を防げば、多くは家で乗り切れる
感染性胃腸炎は、つらいけれど多くは数日で回復する病気です。抗菌薬や特効薬に頼るより、脱水を防ぐことが家庭ケアの中心になります。
- 経口補水液を少量ずつ・頻回に。吐いても30分休んでやり直す1
- おしっこが半日出ない・涙が出ない・ぐったりは受診のサイン。迷えば#80002
- 嘔吐物は塩素系漂白剤で消毒し、家庭内感染を防ぐ3
- ロタウイルスはワクチン(定期接種)で重症化を防げる。開始時期に上限あり5
夜中の嘔吐は、親のほうもぐったりします。でも、やることは「少しずつ水分」と「脱水サインの見張り」。まずはこの2つに集中すれば、多くのお子さんは家で乗り切れます。
参考文献
-
ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)/感染性胃腸炎の治療は対症療法が中心で、脱水予防の水分・栄養補給が重要。抗菌薬は無効、下痢止めは回復を遅らせることがある https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9
-
Signs of Dehydration in Infants & Children|HealthyChildren.org(米国小児科学会 AAP)/尿量減少・涙が出ない・口の乾き・ぐったり・大泉門陥凹などは脱水のサイン。少量頻回の経口補水の考え方。日本では小児救急電話相談#8000も利用できる https://www.healthychildren.org/English/health-issues/injuries-emergencies/Pages/dehydration.aspx ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7
-
ノロウイルスに関するQ&A(厚生労働省)/ノロウイルスはアルコールが効きにくく、次亜塩素酸ナトリウムが有効。嘔吐物・便の処理は約0.1%(1000ppm)、環境は約0.02%(200ppm) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8
-
ロタウイルスによる感染性胃腸炎|国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト/乳幼児に多く、脱水・けいれん・脳炎脳症などの合併症がありうる https://id-info.jihs.go.jp/infectious-diseases/rotavirus-infectious-gastroenteritis/index.html ↩ ↩2
-
ロタウイルスワクチン|厚生労働省/2020年10月1日から定期接種。生後早期に開始し、接種開始時期に上限がある https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/rota/index.html ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
-
日本小児科学会「食育」資料/乳幼児にイオン飲料を長期・多量に与え続けるとビタミンB1(チアミン)欠乏をきたすことがあるとの注意喚起 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/shokuiku_12-3.pdf ↩
-
保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)|こども家庭庁/嘔吐・下痢が治まり普段の食事がとれることが登園のめやす。症状消失後も便中にウイルス排出が続く https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/kansensho-guideline ↩ ↩2 ↩3
医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/7/14)
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