起立性調節障害(OD)とは?朝起きられない・不登校との関係を小児科医が解説
この記事の目次
- 結論: 朝起きられないのは「怠け」ではなく、身体疾患の可能性があります
- 起立性調節障害(OD)とは
- 有病率
- サブタイプ分類 — 新起立試験でわかること
- 不登校との関係
- 家庭でできる対応
- 水分・塩分を多めに、こまめに
- 軽い運動を毎日続ける
- 起立時はゆっくりと
- 生活リズムと心のケア
- 学校との連携
- 発達特性との関連について
- こんなときは受診を
- よくある質問
- Q1: 怠けているだけかもしれないと疑ってしまいます。見分け方はありますか?
- Q2: 起立性調節障害は成長とともに治りますか?
- Q3: 学校にはどう説明すればいいですか?
- Q4: 何科を受診すればいいですか?費用の目安は?
- Q5: 発達障害の特性がある子どもは起立性調節障害になりやすいですか?
- まとめ
- あわせて読みたい
- 参考文献
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「朝、どうしても起きられない」——そんなお子さんの様子に、「サボっているのでは」と戸惑ってしまう保護者の方は少なくありません。学校に行く時間になるとお腹が痛くなったり、めまいを訴えたりすることもあります。
起立性調節障害(OD)は、自律神経を介した循環調節のしくみがうまく働かないために起こる身体疾患です1。本人の気力や性格の問題ではありません。診察室でも、「怠けていると思って叱っていたけれど、病気だったんですね」と驚かれる保護者の方によく出会います。この記事では、ODの基本と不登校との関係、家庭や学校でできる対応を解説します。
結論: 朝起きられないのは「怠け」ではなく、身体疾患の可能性があります
起立性調節障害(OD)は、自律神経を介した循環調節がうまく働かないために起こる身体疾患で1、本人の気力や性格の問題ではありません。軽症も含めると中学生・高校生の約10%が該当すると推計される、決して珍しくない状態です2。
- 特徴は日内変動です。午前中に症状が強く午後には軽くなる波があり、小学校高学年から中学生にかけての発症が多いとされます3
- 不登校のお子さんの約3〜4割にODが併存しているとされています4。「気持ちの問題」と決めつける前に、身体面の要因を確認することが大切です
- 受診の目安。朝起きられない状態が2週間以上続く、頭痛・めまい・倦怠感で午前中の生活に支障が出ている、遅刻・欠席が増えてきた——こうした場合はかかりつけの小児科へ。診断に使う新起立試験は保険診療で受けられます
まずは、ODがどのような病気なのかから見ていきましょう。
起立性調節障害(OD)とは
起立性調節障害は、立ち上がったときに脳への血流が一時的に不足する状態です。めまい・立ちくらみ・頭痛・倦怠感・朝起きられないといった症状が出ます。小学校高学年から中学生にかけて発症することが多く3、午前中に症状が強く午後には軽くなるという日内変動がしばしば見られます。
自律神経は、立ったり座ったりするたびに血圧や心拍数を細かく調整し、脳への血流を保っています。思春期は身体の成長に自律神経の発達が追いつきにくい時期です。この調整がうまくいかなくなることで、ODの症状が現れると考えられています。
有病率
軽症も含めると、中学生・高校生の約10%がODに該当すると推計されています。学年ごとに約12万人、中高生を合わせると全国で約70万人という規模です2。決して珍しい状態ではありません。
一方で、欠席を繰り返すほどの重症例は児童生徒全体の約1%、全国推定7万人とされています2。多くは軽症〜中等症で、日常生活を送りながら経過を見ていくケースが大半です。
サブタイプ分類 — 新起立試験でわかること
ODかどうか、どのタイプかを調べる検査に「新起立試験」があります。安静時と、起立直後・起立を続けた状態のそれぞれで血圧・心拍数を測定し、その変化パターンからサブタイプを判定します5。
主なサブタイプ
- 起立直後性低血圧 — 最も頻度が高いタイプ。起立直後に血圧が大きく低下する
- 体位性頻脈症候群 — 起立時の心拍数が115以上、または安静時からの増加が35以上になるタイプ
- 遷延性起立性低血圧 — 起立後しばらくしてから収縮期血圧が15%以上(または20mmHg以上)低下するタイプ。頻度は高くない
- 血管迷走神経性失神 — 起立中に急に血圧・心拍数が低下し、失神に至ることがあるタイプ。頻度は高くない
自分の子がどのタイプかがわかると、それだけで納得できたという保護者の声をよく聞きます。見通しや対応の重点はタイプによって変わるので、気になる症状があれば小児科で検査を受けてみてください。
なお、めまいや倦怠感は貧血・甲状腺機能の異常・うつ状態など、他の病気でも起こり得る症状です。血液検査などで他の病気を除外したうえでODと診断するのが通常の流れです。
不登校との関係
ODを考えるうえで、特に知っておいていただきたいのが不登校との関連の深さです。
不登校のお子さんに限って見ると、その約3〜4割にODが併存しているとされています4。朝起きられない、頭痛やめまいで午前中の登校が難しい——そうした身体症状が遅刻や欠席の積み重ねにつながります。それが「気持ちの問題」「怠け」と誤解され、孤立を深めてしまうケースが少なくありません。
見方を変えると、OD全体のうち不登校にまで至るのは約3〜4%です。先ほどの「不登校の3〜4割」とは分母が違う、別の統計だという点に注意してください。ODのあるお子さんの多くは、適切な対応をしながら通常の学校生活を送っています。
だからこそ、不登校になってから慌てるのではなく、症状が続き始めた段階で早めに対応することが大切です。
お子さんが学校に行けない状態が続いていて、朝の体調不良や倦怠感が目立つ場合は、「気持ちの問題」と決めつける前に、一度小児科でODの可能性を確認してみてください。身体面の要因が見つかることで、対応の方向性がはっきりすることがあります。
家庭でできる対応
ODの治療は、重症でない限り生活習慣の調整が第一選択です6。
水分・塩分を多めに、こまめに
自律神経の負担を減らすため、水分・塩分は普段より多めが基本です。目安は食事以外に1日1.5〜2リットル程度の水分、食事から10g前後の塩分6。ただし適量は体格や症状によって幅があります。この数字は出発点として、かかりつけ医と相談しながら調整してください。
軽い運動を毎日続ける
寝てばかりだと筋力が落ち、血液を心臓に戻すポンプ機能がさらに弱まります。1日15〜30分程度のウォーキングなど、軽い運動を毎日の習慣にすることが勧められています6。
起立時はゆっくりと
急に立ち上がると症状が出やすくなります。頭を下げてから、あるいは何かにつかまりながらゆっくり起立する習慣をつけると、負担が軽くなります。
生活リズムと心のケア
早寝早起きなど規則正しい生活は自律神経の安定に役立つとされています。ただし、症状が強い時期に無理な早起きを強いるのは逆効果です。波を見ながら段階的に整えましょう。
学校や家庭でのストレスが症状を悪化させることもあります6。「体調が悪いのに登校しなければ」という圧迫感自体が、症状を強めてしまうことがあるからです。本人を追い詰めない関わり方が、回復への近道になります。
重症例では、これらの生活調整に加えて自律神経の働きを助ける薬が使われることもあります。自己判断で市販薬に頼らず、小児科に相談してください。
学校との連携
ODは外からは見えにくい身体疾患です。学校側の理解を得られるかどうかで、本人の負担は大きく変わります。診断を受けたら、診断名と検査結果を学校と共有しましょう。
すり合わせておきたいことは主に4つです。午前中の遅刻・欠席への配慮。体調不良時の保健室利用のルール。体育や行事への参加可否。そして何より、「怠け」ではなく身体疾患であるという理解を教職員間で共有してもらうこと。後輩医師からも、「診断書を渡しただけでは学校側の理解が進みにくい」という相談を受けることがあります。担任だけでなく養護教諭や管理職にも同じ説明が届くよう、面談の機会を持てるとよいでしょう。
連携がうまくいくと、本人の心理的な負担が減り、症状の改善にもよい影響が期待できます。
発達特性との関連について
発達障害の特性を持つお子さんとODの関連について、現時点で確立した統計は限られています。ただし、発達特性のあるお子さんは学校生活での負荷や生活リズムの乱れを抱えやすいことが知られており、臨床の現場ではODの症状と発達特性が併存して見られる場面があります。
どちらか一方だけに注目するのではなく、身体面(OD)と発達面の両方から評価してもらうと、お子さんに合った対応が見えやすくなります。気になる場合は、小児科と発達相談の両方の窓口に相談してみてください。発達の遅れや特性そのものが気になる場合は、子どもの発達が気になったら — 相談先と受診の目安もあわせてご覧ください。
こんなときは受診を
朝起きられない状態が2週間以上続いている、頭痛・めまい・倦怠感で午前中の生活に支障が出ている、立ち上がったときに目の前が暗くなったり失神したことがある、遅刻・欠席が増えてきている——こうした様子が見られたら、一度小児科を受診してみてください。
受診先はまずかかりつけの小児科で構いません。新起立試験は保険診療で受けられ、多くの小児科・小児心療内科で対応しています。
よくある質問
Q1: 怠けているだけかもしれないと疑ってしまいます。見分け方はありますか?
午前中に調子が悪く午後には持ち直す、横になると楽になる、休日は普通に起きられる——こうした日内変動があるかどうかが一つの目安です。診察室でも、この波を保護者に確認するところから診断を始めます。ただし自己判断だけでは限界があるので、気になれば新起立試験で確認してもらうのが一番確実です。
Q2: 起立性調節障害は成長とともに治りますか?
高校卒業を過ぎるころには自律神経の働きが安定し、症状が目立たなくなっていく子が多い印象です。ただし数か月で落ち着く子もいれば、年単位で付き合っていく子もいて、経過の長さにはかなり個人差があります。焦らず今の対応を続けることが、結果的に近道になることが多いです。
Q3: 学校にはどう説明すればいいですか?
「サボり」ではなく自律神経の身体疾患であることを、診断名とともに伝えるのが第一歩です。診断書や検査結果を学校側と共有し、遅刻・欠席時の対応、体育や行事での配慮を事前にすり合わせておくと、本人・保護者・学校の間の誤解を避けやすくなります。
Q4: 何科を受診すればいいですか?費用の目安は?
まずはかかりつけの小児科で構いません。新起立試験は多くの小児科・小児心療内科で実施可能で、保険診療の範囲内で受けられます。症状が複雑な場合や心理面のケアも必要な場合は、小児心身症の専門外来を紹介してもらえることもあります。
Q5: 発達障害の特性がある子どもは起立性調節障害になりやすいですか?
両者の関連を裏づける確立した統計は、今のところ限られています。ただ、発達特性のあるお子さんは学校生活の負荷や生活リズムの乱れを抱えやすい面があり、臨床の現場ではODの症状と発達特性が併存して見られることがあります。どちらか一方だけを見るのではなく、身体面・発達面の両方から評価してもらうと、対応の見通しが立てやすくなります。
まとめ
起立性調節障害は、中高生の約10%が該当する、決して珍しくない自律神経の身体疾患です。朝起きられない・不登校といった状態の背景にODが隠れている場合は多く、不登校のお子さんに限れば約3〜4割にODが併存しているとされています。
「怠け」と決めつける前に、身体面の要因を確認してみる。それだけで、お子さんと保護者双方の負担が軽くなることがあります。気になる症状があれば、小児科への相談を検討してみてください。
あわせて読みたい
医師確認済み
ラボの小児科医(小児科専門医・アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/7/5)
参考文献
-
日本小児科学会「小児期の主な疾患 — 起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation: OD)」 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240130_GL035.pdf ↩ ↩2
-
日本小児科学会 医療委員会調査報告「起立性調節障害の有病率、成人期以降の患者数(推計)」(2016年) http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2016_ikotyosa_hokoku-114-116.pdf ↩ ↩2 ↩3
-
日本小児心身医学会「小児起立性調節障害診断・治療ガイドライン」改訂第2版(南江堂, 2015)に基づく解説論文 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/57/11/57_1157/_pdf ↩ ↩2
-
一般社団法人 小児心身医学会「起立性調節障害」(不登校との関連の項) https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/ ↩ ↩2
-
一般社団法人 小児心身医学会「起立性調節障害」(新起立試験・サブタイプ分類の項) https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/ ↩
-
一般社団法人 小児心身医学会「起立性調節障害」(非薬物療法・心理社会的因子の項) https://www.jisinsin.jp/general/typical_diseases/起立性調節障害/ ↩ ↩2 ↩3 ↩4
医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/7/5)
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