子どもの食物アレルギー — 症状の見分け方・エピペンを使うタイミング・予防の考え方
小児一般 医療解説

子どもの食物アレルギー — 症状の見分け方・エピペンを使うタイミング・予防の考え方

公開: 2026年7月30日 更新: 2026年7月30日

広告表記本記事にはPR(アフィリエイト広告)を含みます。詳細は記事末尾をご覧ください。

「卵を食べたあとに口のまわりが赤くなったんですが、アレルギーでしょうか」——外来でよく受ける相談です。多くはそのまま様子を見て問題ありませんが、ときに判断を急ぐべき状態が混ざっています。その線引きを知っているかどうかで、家庭でできることが変わります。

この記事では、症状の見分け方と、エピペンを使うタイミング・手順を整理します。あわせて、「予防のために食べさせない」という考え方が現在は否定されていることも扱います。

結論:13の症状が1つでもあればエピペン。3つだけ持ち帰ってください

  • 皮膚の症状だけと、臓器をまたぐ症状はまったく別物。ただし呼吸器の症状は単独でも危険
  • エピペンの適応は13の症状として示されている。1つでも当てはまればただちに使う
  • 予防のために離乳食を遅らせない。遅らせても予防効果は認められていない

食物アレルギーとは — 「食べて具合が悪くなる」のすべてではない

食物アレルギーは、特定の食物を摂取したあとに、免疫のしくみを介して皮膚・呼吸器・消化器あるいは全身に症状が起こるものを指します1

免疫が関わらない反応は別物です。牛乳でおなかがゴロゴロする乳糖不耐症や食中毒は、食物アレルギーではありません。「食べて具合が悪くなった=アレルギー」と決めつけないほうが安全です。

新規に発症するのは0歳がもっとも多く、全体の約3割を占めます。2歳以下で約6割、6歳以下で約8割と、低年齢に集中しています2。一方で有症率は、保育所児で4.0%、学童以降で1.3〜4.5%と報告されています2。発症が乳児期に偏っているのに学童期の有症率がそれほど高くならないのは、多くの子が育つ過程で食べられるようになるからです。

原因となる食物は年齢で入れ替わります2。そして近年、順位そのものが変わりました。2023年の全国調査では、クルミが鶏卵に次ぐ第2位(15.2%)となり、牛乳を上回っています3。カシューナッツやピスタチオなど他の木の実類も増加が続いており、クルミは2023年に食品表示の特定原材料へ格上げされました3

「アレルギーといえば卵と牛乳」という感覚のままだと木の実類を見落とします。幼児期以降にはじめて症状が出た場合は、とくに疑う場面が増えています。

症状の見分け方 — じんましんだけか、アナフィラキシーか

食物アレルギーの即時型症状は、複数の臓器で急速に進行するのが特徴です。多くは食べてから2時間以内、とくに30分以内に始まります4。臓器ごとに整理すると次のようになります。

臓器主な症状
皮膚・粘膜じんましん、赤み、かゆみ、まぶたや唇の腫れ
消化器腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
呼吸器咳、ゼーゼー、息苦しさ、声のかすれ
循環器・神経血圧低下、脈が弱い、ぐったり、意識がもうろうとする

このうち複数の臓器に全身性の症状が出て、生命に危機を与えうる状態をアナフィラキシーと呼びます。血圧低下や意識障害を伴う場合は、アナフィラキシーショックです1

つまり、「じんましんが出た」だけと「じんましんに加えて咳き込んでいる」とでは、意味がまったく違います。臓器をまたいだら危険度は一段上がると考えてください(ただし呼吸器は単独でも同じ扱いです)。

ただし「2つそろわないとアナフィラキシーではない」とは覚えないでください。次に挙げる13の症状には呼吸器だけの項目が6つあり、咳き込みやゼーゼーだけでもエピペンの適応です。呼吸器の症状が単独で急速に進む型がいちばん危険です。

アナフィラキシーと判断した場合、第一選択はアドレナリンの筋肉注射です4。抗ヒスタミン薬でもステロイドでもありません。家庭でも使えるアドレナリン製剤がエピペンです。

エピペンを使うのはどんなときか

日本小児アレルギー学会は、医療者でない人が判断できるよう「一般向けエピペン®の適応」を示しています。次の症状が1つでも当てはまれば、ただちに使用します5

分類症状
消化器繰り返し吐き続ける/持続する強い(がまんできない)おなかの痛み
呼吸器のどや胸が締め付けられる/声がかすれる/犬が吠えるような咳/息がしにくい/持続する強い咳き込み/ゼーゼーする呼吸
全身唇や爪が青白い/脈が触れにくい、または不規則/意識がもうろうとしている/ぐったりしている/尿や便を漏らす

皮膚の症状だけであれば、この13項目には入りません。ただし過去に重いアナフィラキシーを起こしたことがある場合や、症状が急速に広がっている場合は積極的に使うこととされています5

当てはまらなかった場合も、そこで終わりではありません。皮膚の症状だけでも、少なくとも1時間はそばを離れず、2時間は目を離さないでください。多くはこの間に山を越えます4。処方されている内服薬があればその指示にしたがい、手持ちの市販薬で間に合わせようとしないでください。観察中に13の症状のどれかが出たら、その時点でエピペンと119番です。症状が治まっても、原因の見当をつけるために後日かならず受診してください。

📋 エビデンス

上記の症状が1つでもあれば、ただちにエピペン®を使用し、救急車を要請してください。

出典: 日本小児アレルギー学会「一般向けエピペン®の適応」 ↗

学会は、判断に迷う場合にも使用を勧める立場を示しています。打たずに様子を見て悪化するより、打って受診するほうが安全だからです。この非対称性が、迷ったら打つという原則の根拠になっています。

エピペンの使い方

エピペンは医師の処方が必要な薬です。アナフィラキシーの既往やリスクがある場合は、まずかかりつけ医に処方について相談してみてください。

手元にエピペンがない場合は、13の症状のどれかに当てはまった時点でただちに119番通報してください。持っていないことは、待ってよい理由にはなりません。

手順は単純です。ただし処方時に渡される練習用トレーナーに一度も触れないまま、しまい込まれていることがよくあります。緊急時に初めて読むのでは間に合いません。預かる前に一度、押し当てる感覚まで確かめておいてください6

太ももの前外側に、オレンジ色の先端を垂直に押し当てているところ。もう一方の手で脚を押さえている
  1. 携帯用ケースから取り出し、青色の安全キャップを外す(オレンジ色の先端側に指を置かない)
  2. 太ももの前外側に、オレンジ色の先端を当てる。衣服の上からでも打てる
  3. 「カチッ」と音がするまで強く押し当て、そのまま5つ数える
  4. 抜いて、オレンジ色のニードルカバーが伸びていることを確認し、打った部位を10秒間もむ
  5. 119番通報し、症状に合わせた体位で安静にする(人手があれば注射と同時に通報)

体位は症状で変わる

ここを一択で覚えないでください。東京都のガイダンスは、症状ごとに3つの体位を示しています6

症状体位
ぐったり・意識がもうろう仰向けで足を15〜30cm高くする
吐き気・嘔吐がある体と顔を横に向ける(吐いたもので詰まらせないため)
息が苦しく仰向けになれない上半身を起こし、後ろに寄りかからせる

共通するのは立たせない・歩かせないことです。血圧が下がっている状態で立たせると、急激に悪化することがあります。抱き上げて移動させるのも避けてください6

打ったあとにすること

エピペンが2本以上手元にあり、使用から10〜15分たっても症状の改善が見られない場合は、2本目を使用します6。反応がなく呼吸もない場合は、心肺蘇生を行います6

もうひとつは、症状が治まったように見えても必ず受診すること。アドレナリンの効果は一時的で、いったん落ち着いたあとにぶり返すことがあります7。エピペンは救急車が来るまでの時間を稼ぐ薬であって、治療を終わらせる薬ではありません。

診断はどうつけるのか — 検査だけでは決まらない

特異的IgE抗体を測って「陽性です」と言われ、そのまま自己判断の完全除去に入ってしまう——外来でいちばん多い行き違いです。

検査の陽性は、体が反応しうる準備がある(感作)ことを示すだけで、実際に食べて症状が出るか(発症)とは別の話です。抗体検査が陽性でも、その食品を食べられる子は多くいます8。確定診断は、医師の管理下で実際に食べて確かめる食物経口負荷試験で行います8

検査結果の紙だけを見て、家庭で除去を決めないでください。症状が出た食物の見当がつく場合も、次に食べさせる前に一度受診してください。自己判断の除去を続けると、必要のない食物まで避けることになり、栄養面で不利益が出ます。

発症を予防できるのか — 「念のため除去」はしない

「卵はいつから始めていいですか」は、乳児健診でよく受ける質問です。ここは考え方が大きく変わりました。かつては「アレルギーが心配だから遅らせましょう」と言われていましたが、現在は逆です。

当時の指導にしたがって遅らせていた保護者が、それを悔やむ必要はありません。推奨がそうだっただけです。

📋 エビデンス

食物アレルギーの発症予防を目的として、離乳食の開始やアレルゲンとなる食物の摂取開始を遅らせることは推奨されていません。乳児期の湿疹(アトピー性皮膚炎)は、食物アレルギー発症の重要なリスク因子として知られています。

出典: 日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版」第6章 リスク因子と予防 ↗

現在の考え方は、次の3点です910

  • 離乳食の開始や、卵などの摂取開始を遅らせない。遅らせても予防効果は認められていない
  • 妊娠中・授乳中に母親が特定の食物を除去することは、予防として推奨されない。有効という十分な根拠がなく、母体の栄養面から有害となりうる
  • 乳児期早期からの保湿剤塗布は、食物アレルギーの発症予防としては推奨に足る根拠がない

3つ目は誤解されやすいところです。「保湿すればアレルギーを防げる」という話が広まっていますが、予防効果としては推奨されていません。

ただし湿疹そのものはリスク因子です。湿疹をきちんと治療して良い状態に保つことには意味があります。保湿は「アレルギーを防ぐため」ではなく「湿疹を治すため」と考えるほうが正確です。

湿疹のケアについては乳児湿疹の記事保湿剤の選び方にまとめています。

では、いつ何から始めるのか

「遅らせるな」と言われた次に来るのは、当然この疑問です。厚生労働省の授乳・離乳の支援ガイドは、卵について次のように示しています10

離乳初期には固ゆでにした卵黄を用い、離乳が進むにつれて卵黄から全卵へ進めていく。新しい食品を始めるときは離乳食用のスプーンで1さじずつ与え、様子をみながら量を増やしていく。

固ゆでにした卵黄を細かくほぐしたものと、ごく少量をのせた離乳食用のスプーン

卵黄については、耳かき1杯〜小さじ4分の1程度のごく少量から始める運用が一般的です。しっかり加熱したものから始めるのが原則で、生や半熟は後回しです。始める日は、体調のよい日の午前中を選んでみてください。何かあったときに受診できる時間帯だからです。

初めての一口をあげる朝は、親のほうが緊張するものです。それは自然な反応で、平日の午前という条件さえ守っていれば十分です。

なお、すでに湿疹がある赤ちゃんの離乳食は、進め方が変わることがあります。始める前に一度、かかりつけ医に湿疹の状態を見てもらってから相談してみてください。

園・学校とどう付き合うか

診断がついたら、次は集団生活の場での対応です。ここは口頭のやり取りではなく、書面で回すのが原則になっています。

保育所・学校では、医師が記入する生活管理指導表にもとづいて、除去食や緊急時の対応を決める運用が定められています1112。園や学校から様式をもらい、受診時に持参して記入を依頼してください。

知っておいてほしいのが、園での対応は原則として完全除去だという点です11。提供するかしないかの二択で、「家では加熱卵なら少し食べられるので、つなぎだけは食べさせてほしい」という運用は行われません。家庭で食べられていても園では出ない、という食い違いはここから来ています。安全側に倒すための設計だと理解しておくと、園と衝突せずに済みます。

口頭の申し送りは、担任が替わる年度替わりで抜け落ちます。記入依頼は進級前に集中するので、診断がついた時点で段取りを決めておくのが確実です。

エピペンを預ける場合は、保管場所と、誰が打つのかをあわせて確認しておいてください。緊急時に鍵のかかった職員室まで取りに行くようでは間に合いません。

よくある質問

じんましんが出ただけでもエピペンを打つべきですか?

皮膚の症状だけなら、ただちにという段階ではありません。ただし過去に重いアナフィラキシーを起こしている場合や、目の前で症状が広がっていく場合は、皮膚だけでも積極的に使うこととされています。逆に、皮膚に何も出ていなくても、咳き込みやゼーゼーがあればエピペンの適応です。皮膚症状の有無で判断しないでください。

エピペンの有効期限が切れていました。打ってもいいですか?

まず119番通報し、期限切れのものしかないことを伝えて指示にしたがってください。添付文書では、薬液が変色していたり沈殿物が認められたりするものは使用せず、新しい製品の処方を受けることとされています13。期限切れのエピペンを「備えがある」状態と考えないでください。保管は15〜30度が目安で、直射日光と高温を避けます13。夏の車内も冷蔵庫も適しません。期限が近づいたら、切れる前にかかりつけ医で再処方を受けてください。

一度アレルギーと言われたら、もう一生食べられないのですか?

多くの場合そうではありません。年齢が上がるにつれて食べられるようになる子は多くいます。食べられるようになったかどうかは、医師の管理下で実際に食べて確かめる食物経口負荷試験で確認します。自己判断で再開するのも、逆に除去を続けたままにするのも避けて、定期的に主治医と見直してください。

加熱すれば食べられますか?

卵や牛乳では、しっかり加熱したものなら食べられて、生や半熟では症状が出るという子がいます。加熱でたんぱく質の構造が変わるためです。ただしどこまで加熱すれば大丈夫かは個人差が大きく、家庭で試す判断ではありません。負荷試験で「この形状ならこの量まで」を確認してから進めます。なお園では原則として完全除去なので、家庭で加熱卵が食べられていても園では提供されません。

きょうだいにアレルギーがあると、下の子も発症しますか?

きょうだいにあるからといって、下の子も必ず発症するわけではありません。そして重要なのは、心配だからと下の子の離乳食を遅らせないことです。遅らせても予防効果は認められていません。むしろ湿疹があればそちらをきちんと治療するほうが理にかなっています。進め方に不安があれば、離乳食を始める前にかかりつけ医に相談してください。

まとめ

緊急時の判断は、13症状のどれかに当てはまるかどうかの一本です。当てはまればエピペンを打って119番、症状に合う体位で待つ。ここだけは覚えて帰ってください。

予防については、「念のため食べさせない」をやめることが出発点です。遅らせても予防効果は認められていません。

広告表記当サイトはアフィリエイト広告を掲載しています。商品・サービスの紹介にあたり、広告主から報酬を受け取る場合がありますが、記事内容や評価には一切影響しません。
👨‍⚕️

医師確認済み

ラボの小児科医(小児科専門医・アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/7/30)

参考資料

あわせて読みたい

参考文献

  1. 日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版」第2章 定義・分類 https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_2.html 2

  2. 日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版」第5章 疫学 https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_5.html 2 3

  3. 消費者庁「令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_241031_1.pdf 2

  4. 日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版」第7章 即時型症状の重症度判定と対症療法 https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_7.html 2 3

  5. 日本小児アレルギー学会「一般向けエピペン®の適応」 https://www.jspaci.jp/gcontents/epipen/ 2

  6. 東京都アレルギー情報navi.「エピペン®の使い方(家庭・保護者等向け)」 https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/measure/epipen_home.html 2 3 4 5

  7. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー」 https://www.pmda.go.jp/files/000231682.pdf

  8. 日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版」第8章 診断と検査(総論) https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_8.html 2

  9. 日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021 ダイジェスト版」第6章 リスク因子と予防 https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_6.html

  10. 厚生労働省「食物アレルギーの観点から授乳・離乳を支援するポイント」 https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/000464805.pdf 2

  11. 厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」 https://sukoyaka21.cfa.go.jp/media/tools/s4_nyu_gail029.pdf 2

  12. 文部科学省「アレルギー疾患対応/学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」 https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/1353630.htm

  13. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「エピペン注射液0.15mg/エピペン注射液0.3mg」添付文書 https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2451402G2020_4_02/ 2

この記事をシェア

LINE ポスト
👨‍⚕️

医師確認済み

ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/7/30)

関連記事

ラボの小児科医

ラボの小児科医

小児科専門医・アレルギー専門医

日本小児科学会 小児科専門医 日本アレルギー学会 アレルギー専門医

専門領域

小児一般診療 アレルギー疾患(食物・アトピー・気管支喘息) 皮膚疾患 発達相談

「日々の外来で保護者から寄せられる疑問をもとに、ガイドラインと実臨床の両面から解説しています。」

小児科専門医・アレルギー専門医。二児の父。診療ガイドラインと論文に基づく医療解説と、親として本当に使ってよかった用品レビューを発信。

当サイトはアフィリエイト広告を掲載しています。詳しくは広告についてをご覧ください。