子どもの目やに、原因と対処の目安|小児科医が解説
この記事の目次
この記事のポイント
- 小児科で最もよく見る目やにの原因は「続発性鼻涙管閉塞」——風邪・鼻炎が引き金になる
- 鼻水と目やにが連動して出るなら、点眼薬より先に鼻の治療・鼻水吸引が有効
- 生後間もない赤ちゃんの片目だけの目やには「先天性鼻涙管閉塞」が多く、1歳までに9割が自然に治る
- 充血がある・膿状・まぶたが腫れているならその日のうちに受診
📋 エビデンス
この記事の医学的内容は、日本眼科学会・日本小児科学会・米国小児科学会(AAP)・国立成育医療研究センターの公式情報に基づいています。個別の医療判断についてはかかりつけ医にご相談ください。
出典: ↗子どもの目やにの相談は外来でよくあります。
「風邪のたびに目やにが出る」「鼻水と一緒に目やにも来る」——こういった訴えが実は一番多い。多くは鼻涙管が鼻汁や炎症によって詰まる続発性鼻涙管閉塞で、鼻の治療が落ち着けば目やにも引いていきます。
一方、「生まれてすぐから片目だけずっと目やにが出ている」という場合は先天性鼻涙管閉塞が多く、1歳までに9割が自然に開通します。
充血がなく元気なら、どちらも基本的には落ち着いて対処できます。ただ、受診が必要なサインを見落とすと感染症を見逃します。原因別に整理します。
子どもの目やに、主な原因
最もよく見る:風邪・鼻炎による続発性鼻涙管閉塞
「風邪をひくと必ず目やにが出る」という子が外来にはたくさん来ます。

a: 涙腺 / b・e: 涙点(上・下)/ c・f: 涙小管(上・下)/ d: 涙嚢 / g: 鼻涙管
出典: Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
まず涙道の解剖を少し。目の内側(涙点)から始まる涙の流れは、涙嚢→鼻涙管→鼻腔(下鼻道)へと続いています。鼻涙管の出口は鼻腔に直接開いているため、鼻炎や上気道炎で鼻粘膜が腫れると、この出口が狭くなります。鼻汁が粘稠になれば、物理的に出口を塞いでしまうことも起きます。涙の流れが滞ると、目やにとして現れます。
ポイントは「鼻症状と目やにが連動する」ことです。鼻水が出始めると目やにも出て、鼻症状が落ち着けば目やにも減る。鼻炎は両側性が多いため、両目に出ることも珍しくありません。
乳幼児は年に6〜10回程度の上気道炎にかかります。その都度目やにが出る子は、このパターンを繰り返しています。
対処の基本は鼻の治療です。充血がなく膿状でなければ、点眼薬を出すより先に鼻水の吸引・鼻炎への対処を考えます。電動の鼻水吸引器でしっかり吸引すると、目やにの改善につながることがあります。
生後間もない赤ちゃんに多い:先天性鼻涙管閉塞
「生まれてすぐから片目だけ目やにが続いている」という乳児の場合は先天性鼻涙管閉塞を考えます。
鼻涙管の下端(鼻腔への出口付近)が、生まれつき薄い膜で閉じていることで涙がたまり、細菌が繁殖して目やにが出ます。充血は基本的に起きません。出生の約6%に認められるとされています(日本眼科学会)。
片目だけに出るのは、左右の鼻涙管が独立しているため。鼻症状との連動はなく、風邪がなくても目やにが続くのが続発性との大きな違いです。
細菌性結膜炎との違い
外来で最もよく聞かれる質問がこれです。
| 先天性鼻涙管閉塞 | 細菌性結膜炎 | |
|---|---|---|
| 充血(白目が赤い) | ほぼない | ある |
| 目やにの出る目 | 片目が多い | 両目になりやすい |
| 目やにの性状 | 粘液状・白〜黄色 | 膿状・黄緑色 |
| まぶたの腫れ | 基本的にない | 腫れることがある |
| 発熱 | ない | 伴うこともある |
| 時期 | 生後2〜3週から継続 | 急に始まることが多い |
これを見ると、「充血があるかどうか」が最初の分岐点です。充血がないなら細菌性結膜炎の可能性は低い。充血がある場合は感染を疑って受診してください。
ウイルス性結膜炎(流行性角結膜炎)
アデノウイルスによる感染性結膜炎で、「はやり目」とも呼ばれます。充血が強く、目やにも出て、発熱・咽頭炎を伴うことがあります(咽頭結膜熱=プール熱)。乳児ではあまり多くありませんが、上の子がかかっていて感染した場合などで見ることがあります。これも受診が必要です。
新生児涙嚢炎
鼻涙管閉塞に細菌感染が合わさり、涙嚢(ため池の部分)が腫れた状態です。鼻の付け根の内側が赤く膨らんで、そこを押すと目から膿が出るような所見が特徴的です。痛みがあり、赤ちゃんが泣いたり不機嫌になります。これは早めに眼科または小児科への受診が必要で、抗菌薬の内服が必要になることがあります。
先天性鼻涙管閉塞と新生児涙嚢炎の違いは、涙嚢部分の腫れと発赤があるかどうか、そして赤ちゃんが痛そうにしているかどうかで判断します。
先天性鼻涙管閉塞の場合:涙嚢マッサージと経過観察
以下は主に生後間もない乳児の先天性鼻涙管閉塞向けの内容です。
涙嚢マッサージ(Crigler法)のやり方
先天性鼻涙管閉塞の保存的治療として、外来でも指導しているのが涙嚢マッサージです。
目的
鼻涙管の内圧を高めることで、閉じている薄膜を押し開くことを目的とします。毎日続けることで閉塞が自然解消するのを後押しします。
手順
- 手を石けんでよく洗う
- 人差し指か小指の腹を、目頭のやや鼻寄り(涙嚢の位置)に当てる
- 下方向(鼻腔に向かう方向)に向けて、軽めの圧で2〜5回押し下げる
- 1日2〜4回行う。授乳の前後など、決まったタイミングに組み込むと続けやすい
力加減は「優しくしっかり」。強すぎると痛くなるので、指を皮膚に密着させたまま滑らせるイメージで。
うちのクリニックでも指導しますが、最初はやり方が不安な方が多いので、受診時に実際に見せてもらうのが一番確実です。
効果について
Crigler法(涙嚢マッサージ)は日本眼科学会でも紹介されている方法で、安全に行える処置です。研究によっては自然治癒との有意差が限定的とするものもあり、「マッサージをすれば必ず早く治る」と言い切れるわけではありませんが、リスクのない方法として標準的に行われています。
いつまで様子を見ていいか
よく聞かれる「いつまで待てばいいか」に、明確に答えます。
1歳(生後12ヶ月)が目安です。先天性鼻涙管閉塞は、生後12ヶ月までに約90%が自然開通します(日本眼科学会、AAP)。つまり10人中9人は手術なしに治ります。1歳未満のうちは涙嚢マッサージを継続しながら経過観察するのが、国内外のガイドラインで一致した方針です。
妻のママ友からも「いつまで目やにが続くの?と焦ってる」という話を聞きますが、充血がなく元気ならば、1歳を待つ方針で問題ありません。
1歳を過ぎても改善しない場合
約10%は自然に開通せず、眼科での処置が必要になります。主な選択肢は次の2つです。
- ブジー(涙管通水・洗浄): 細い金属のワイヤーを涙点から鼻涙管に通して閉塞を解消する処置。外来または日帰り全身麻酔で行われる
- 涙管チューブ挿入術: より細いシリコンチューブを留置し、管が開いた状態を保つ処置
どちらも比較的短時間で終わる処置です。月齢・閉塞の程度・反復しているかなどによって適切な方法が異なるため、眼科医との相談で決めます。
受診すべきサイン
以下に1つでも当てはまる場合は、その日のうちに小児科または眼科を受診してください。
- 白目が充血している(赤い)
- 目やにが膿状・黄緑色で量が多い
- まぶたが腫れている
- 鼻の付け根(涙嚢部分)が赤く腫れている
- 発熱を伴っている
- 赤ちゃんが目を気にして触る・不機嫌
特に生後4週以内(新生児期)は、淋菌やクラミジアによる感染性結膜炎の可能性があります。これらは進行が速く、角膜にまで及ぶと視力に影響が出ることがあります。新生児の目やに+充血は緊急度が高いと考えて、迷わず受診してください。
逆に、以下のすべてが当てはまる場合は経過観察で構いません。
- 充血がない
- 片目(または左右で程度の差が大きい)
- 目やには粘液状・白〜淡黄色
- 発熱・機嫌の悪化がない
- 生後3週以降から継続している
この状態であれば、ほぼ間違いなく先天性鼻涙管閉塞です。
点眼薬はどう使う?
かかりつけ医から抗菌点眼薬が処方された場合、それは目やにを引き起こしている細菌(二次感染)への対処です。鼻涙管の閉塞そのものを点眼薬で開通させることはできません。
処方された期間・回数を守って使い切ってください。途中で「よくなったから」とやめると再燃することがあります。使い続けても改善しない・目やにの量が増える場合は、再度受診して評価してもらってください。
後輩の研修医からも「点眼薬を出してしまったけど、いつまで続けるべき?」と相談されることがあります。二次感染の治療としての短期使用が基本で、閉塞が残っている間は点眼をやめても目やには出続ける——というのを保護者に最初から伝えておくのが大事です。
医師確認済み
ラボの小児科医(小児科専門医・アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/5/14)
まとめ
子どもの目やには原因によって対応が変わります。
風邪・鼻炎と連動して出るなら続発性鼻涙管閉塞。点眼薬より先に鼻水吸引・鼻炎の治療を考えてください。生後間もない赤ちゃんが片目だけずっと出しているなら先天性鼻涙管閉塞。1歳まで涙嚢マッサージで経過観察が基本です。
どちらも充血がなく元気なら、慌てる必要はありません。
受診の判断はシンプルです。充血がある・膿状・まぶたが腫れている・発熱を伴うなら、その日のうちに小児科か眼科へ。新生児(生後4週以内)の目やに+充血は即日受診です。
📋 エビデンス
本記事の医学的内容は、日本眼科学会・日本小児科学会・米国小児科学会(AAP)・国立成育医療研究センターの公式情報に基づいています。記事内の情報は一般的な医学知識の提供を目的としており、個別の診断・治療判断を行うものではありません。お子さんの症状についてはかかりつけ医または眼科医にご相談ください。
出典: ↗医師確認済み
ラボの小児科医(日本小児科学会 小児科専門医・日本アレルギー学会 アレルギー専門医)が「全文」を確認 (2026/5/14)
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