子どもの口呼吸 — 原因・歯並びへの影響・家庭でできる改善法を小児科医が解説
歯科・口腔 医療解説

子どもの口呼吸 — 原因・歯並びへの影響・家庭でできる改善法を小児科医が解説

公開: 2026年6月27日 更新: 2026年6月27日

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写真を撮るたびに口が開いている。寝ているときにいびきをかく。保育園の先生に「いつも口が開いてますよ」と言われた——。

外来でも「口が開いてるんですが、大丈夫でしょうか?」という相談をよく受けます。多くの親が「そのうち治るかな」と様子を見てしまいますが、口呼吸が習慣になると歯並びや顔の発達、感染リスクに影響します。

この記事では口呼吸の原因から影響、家庭でできるチェック、改善法まで順に解説します。


この記事のポイント(結論先出し)

口呼吸の主な原因は、アデノイド肥大・アレルギー性鼻炎・口唇閉鎖力不足・習慣の4つです。放置すると歯列弓が狭くなり、開咬やアデノイド顔貌につながる可能性があります。

  • 耳鼻科と小児歯科の両方に相談することが大切
  • 家庭では「あいうべ体操」や「口唇トレーニング」が補助として有効

口呼吸とは — 鼻呼吸との違い

人間はもともと、鼻で呼吸するように設計されています。鼻腔には吸い込んだ空気を温め、湿らせ、細菌やウイルスをフィルタリングする機能があります。

口呼吸では、この防御機構をすべてバイパスします。乾燥した空気が直接のどへ届くため、粘膜が荒れやすく、ウイルスや細菌が入り込みやすくなります。

乳幼児期は口の周りの筋肉が未発達なため、集中しているときや眠っているときに自然と口が開くことはあります。問題になるのは、3〜4歳以降も安静時に口が開いたままになっている状態です。


口呼吸の4つの原因

1. アデノイド肥大

アデノイドは鼻の奥、上咽頭にあるリンパ組織です。4〜5歳ごろに最も大きくなり、鼻腔の出口を塞ぐことがあります。すると鼻で呼吸できなくなり、口呼吸が強制されます。

いびきや無呼吸を伴う場合は、アデノイド肥大の可能性が高いです。耳鼻科でレントゲンや内視鏡で確認できます。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のガイドラインでも、症状が重い場合の手術適応が示されています1

2. アレルギー性鼻炎

スギ・ダニ・ハウスダストなどによるアレルギー性鼻炎は慢性的な鼻閉を引き起こします。鼻がつまると自然と口呼吸になり、それが習慣化します。

アレルギー性鼻炎は適切な治療で鼻通りを改善できます。まず耳鼻科で診断を受けることが先決です。

3. 口唇閉鎖力不足

口の周りの筋肉(口輪筋)が弱いと、リラックスした状態で唇が自然に閉じません。以前は風船遊びや笛、ストロー飲みなど口輪筋を使う機会が日常に多くありました。現代はそうした機会が減り、口唇閉鎖力が弱い子が増えていると言われます。

妻のママ友の間でも「うちの子、口が閉じない」という話は出ます。単なる筋力の問題であれば、家庭での訓練で改善できます。

4. 習慣

鼻の通りが良くなっても、長期間の口呼吸によって「口を開けること」が定着する場合があります。筋肉記憶のようなもので、意識しないと口が開いたまま過ごしてしまいます。この場合は意識的なトレーニングが必要です。


口呼吸が顔の発達・歯並びに与える影響

日本小児歯科学会は、口呼吸が歯並びやかみ合わせに影響を及ぼすことを指摘し、口腔機能発達不全として保険診療の枠組みで対応を進めています2

アデノイド顔貌

口呼吸が長期間続くと、顔の骨格や筋肉の発達に影響します。上あごが十分に成長せず、下あごが後退した印象になり、常に口が半開きになった表情が定着します。これを「アデノイド顔貌」と呼びます。

顔の骨格の発達は幼少期に集中します。早期に口呼吸を改善するほど、発達への影響を小さくできます。

歯列弓の狭窄

舌は通常、上あご(口蓋)に軽く触れた状態で休んでいます。この舌の位置が、上あごを内側から押し広げる力になっています。

口呼吸では舌が低位に落ちるため、この力が失われます。結果として上あごの幅が広がらず、「狭窄歯列弓」と呼ばれる細くなった歯並びになりやすくなります。

開咬

口が常に開いていると、上下の前歯が噛み合わない「開咬」になる場合があります。奥歯は噛み合っているのに、前歯で噛み切れない状態です。矯正治療が必要になるケースもあり、早期発見が大切です3


家庭でできるチェックリスト

以下のサインが複数当てはまる場合、口呼吸が習慣になっている可能性があります。

日常のサイン5つ

まず確認したいのが「安静時」の状態です。テレビを見ているとき・遊びに集中しているときに口が開いていれば、口呼吸の可能性があります。

次に睡眠中です。いびきをかく・無呼吸がある・朝に口の中が乾燥しているなら、就寝中も口呼吸になっていると考えられます。

  1. 食事中に口を開けてくちゃくちゃと音を立てる
  2. 頻繁に口内炎ができる・扁桃炎を繰り返す

この2つも日常のサインです。口腔内の乾燥が続くと粘膜が荒れやすく、感染しやすい状態になります。

Yahoo!知恵袋でも「子どもがいつも口を開けているけど鼻で呼吸できてるの?」という質問がよく見られます。サインに気づいたら次のステップは「受診」です。

口呼吸の子は口腔内が乾燥しやすく、むし歯や歯肉炎のリスクも高まります。歯ブラシ選びと合わせて、むし歯予防の基本も確認しておきましょう。→ 子どものむし歯予防 — 小児科医が教える7つの習慣


改善方法

耳鼻科での治療が最優先

アデノイド肥大やアレルギー性鼻炎が原因の場合、まず耳鼻科で原因を治療することが前提です。鼻の通りが良くならないまま訓練だけしても効果は限定的です。

いびきや睡眠中の無呼吸がある場合は特に早めの受診をおすすめします。

口テープ(鼻呼吸促進テープ)

就寝中に口が開かないよう、唇の中央に小さなテープを貼る方法があります。睡眠中の口呼吸を防ぎ、鼻呼吸の習慣づけに役立つとされています。

ただし、アデノイド肥大が重度の場合や鼻が完全につまっている場合は使用できません。耳鼻科で「鼻が通っている」と確認してから使いましょう。

あいうべ体操

福岡の今井一彰医師が提唱した口輪筋と舌のトレーニングです。

「あ」で口を大きく開け、「い」で口を横に広げ、「う」で口を前に突き出し、「べ」で舌を下に思い切り伸ばす。この4つで1セットです。

1セット4つの動作を1日30セット(朝昼晩10セットずつ)が目安とされます。お風呂の中や歯磨きの後に取り入れると続けやすくなります。

「あいうべ体操を親子で一緒にやると子どもが喜んでやってくれる」という声も外来で聞きます。遊び感覚でできると続きます。

MFT(口腔筋機能療法)

歯科・矯正歯科で行う専門的なトレーニングです。舌の位置・唇の閉じ方・飲み込み方を正しいパターンに戻す訓練で、複数回の指導を受けながら進めます。

口呼吸の習慣化が強い場合や、歯並びへの影響がすでに出ている場合は、MFTを早めに始めることが勧められます。


よくある質問(Q&A)

Q1. 子どもの口呼吸は自然に治りますか?

原因によります。口唇閉鎖力不足や習慣が原因の場合は訓練で改善できますが、アデノイド肥大やアレルギー性鼻炎が背景にある場合は耳鼻科での治療が必要です。「様子見」で長引かせるより、気になったら早めに受診することをおすすめします。

Q2. 口呼吸だと歯並びが悪くなるのはなぜですか?

口が開いていると、舌が本来あるべき上あごから離れた位置に落ちます。舌の押し上げる力がなくなるため上あごが十分に広がらず、歯列弓が狭くなります。また常に口が開いた状態は開咬(上下の歯が噛み合わない状態)にもつながります。

Q3. 何歳から耳鼻科や小児歯科に相談すべきですか?

口呼吸が疑われる年齢に下限はありません。いびきや無呼吸がある場合はすぐに耳鼻科へ。歯並びへの影響が心配な場合は、乳歯が生え揃う3歳ごろから小児歯科に相談するとよいでしょう。「まだ小さいから」と待つより早い相談が早い解決につながります。


まとめ

口呼吸は「その子の癖」で終わらせていいものではありません。原因が鼻にある場合は耳鼻科、歯並びへの影響が心配な場合は小児歯科へ。どちらか一方ではなく、必要に応じて両方に相談することが大切です。

家庭でできる「あいうべ体操」は補助として有効ですが、根本の原因治療が先決です。

歯並びとあわせて確認しておきたい——歯ブラシの選び方はこちら: 子ども用歯ブラシの選び方 / 矯正のタイミングは: 子どもの矯正はいつから?


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参考文献

  1. 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「診療ガイドライン INDEX」 https://www.jibika.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=1

  2. 日本小児歯科学会「口腔機能発達不全の治療に関する重要なお知らせ」 https://www.jspd.or.jp/recommendation/article26/

  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット「不正咬合の治療法の概要」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-06-002.html

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「日々の外来で保護者から寄せられる疑問をもとに、ガイドラインと実臨床の両面から解説しています。」

小児科専門医・アレルギー専門医。二児の父。診療ガイドラインと論文に基づく医療解説と、親として本当に使ってよかった用品レビューを発信。

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